松田学先生衆議院本会議質問(平成26年10月14日)


松田学君 次世代に胸を張れる日本へ。次世代の党の松田学です。(拍手)

 私たち次世代の党は、まち・ひと・しごと創生法案を審議する特別委員会の設置に反対しました。それは、精神訓示を羅列しただけの本法案に、あえて特別委員会を設置するだけの内容がないからであります。

 内容がすかすかなのは、本臨時国会冒頭での安倍総理の所信表明演説もそうでありました。国家の宰相として持つべき危機意識の欠如した、緊張感を欠いた作文だったと平沼党首が代表質問で申し上げたとおりであります。

 今国会は地方創生と女性活躍が二大テーマだそうですが、我が国には、国会として真摯に取り組むべき大テーマがもっと山積しているはずです。この国難の折に、安倍政権は、国論を二分する重大問題を避けて、安全運転、つまり守りの停滞局面に入ってしまったようです。

 そもそも、特別委員会を設置すべきは、多くの国民が不安を抱いている消費税問題、我が国の名誉と国益にかかわる歴史問題の方ではないでしょうか。

 今重点的に審議すべき課題の優先順位が間違っているのではないか。安倍総理の認識を伺います。

 このところ、アベノミクスの化けの皮が剥がれてきています。これは、安倍政権の失速を象徴するものでもあります。

 そもそも、アベノミクスには政策設計の誤りがありました。円安によるコストプッシュ型インフレは、インフレ目標の設定が想定する物価上昇ではなく、スタグフレーションへの道です。むしろ、円安で交易条件が悪化し、社会保障給付に回る消費増税よりも、経済により重い負荷がかかっていく可能性があります。

 異次元の金融緩和も、肝心の市中のマネーの拡大ではなく、長期金利上昇を力ずくで抑えるためにやめられなくなった大量の国債購入で日銀のバランスシートをやみくもに拡大させ、経済財政の破局のリスクを高め、日本経済に時限爆弾を埋め込んでいます。これを糊塗しようと成長戦略を掲げても、中身の薄い言葉とスローガンだけのレトリック政策にとどまっています。その究極が、このローカルアベノミクスではないでしょうか。

 安倍総理は、消費税率一〇%への引き上げのデフレリスクを心配していますが、他方で、消費増税の先送りが長期金利急上昇のきっかけになるというリスクには対応のしようがないと黒田日銀総裁は述べています。これは、増税してもしなくてもアベノミクスが行き詰まりであることを示しているものではないでしょうか。消費増税先送りで懸念されるリスクへの対応策をどうするかも含め、安倍総理の認識を伺います。

 さて、日本経済は、九〇年代以降、二つの経済圏に分断されたと言われています。グローバル経済圏と、一人当たり実質所得が低下をし続けているローカル経済圏であります。

 第三の矢は、大企業や資産保有者、外資や成功者などグローバル経済圏を向いた従来型の新自由主義的な政策でありますが、人口の大半を占めるローカル経済圏には、これとは異なるパラダイムの政策が必要であります。ローカルアベノミクスは、この点を踏まえた新しい枠組みの政策設計を提供しようとするものなのか、石破大臣に伺います。

 そもそも、成長戦略は、官僚や既得権益が許す範囲を見きわめながら個別の規制改革措置を出していくような手法では、経済に大きくききません。今の日本経済に必要なのは、成長の仕組みづくりに向けて、その大枠を定めることではないでしょうか。

 私たち次世代の党は、地方それぞれが独自の成長ストーリーを追求できる枠組みとして、グローバル大競争にたえ得る広域経済圏単位での経済循環の構築を考えております。

 四十七都道府県単位で東京に依存するモデルは通用しなくなりました。自立なきところに成長はありません。そして、地方の自立の単位は、より広域なものにする必要があります。

 日本の各地方ブロックは、欧州中規模独立国家並みの規模を誇っています。そこに機能分化と統合を設計する単位として、次世代の党は、道州制を日本型州制度として組み立てることを考えています。

 成長戦略には、統治機構改革まで踏み込んだ将来展望が不可欠であります。日本の将来の姿形を想定し、そこに向けた大きな自立のストーリーを各地方に生み出していくべきであります。

 自民党も道州制を公約で掲げましたが、それをどこまで現実の課題として本気で実現しようとしているのか、道州制と経済成長とを結びつける発想がローカルアベノミクスにあるのかどうか、安倍総理の認識を伺います。

 今回の地方創生法案を見て、私は、昨年内閣委員会で審議した国家戦略特区法案を思い出しました。それは、アベノミクス成長戦略の柱とされたにもかかわらず、規制改革の重要なメニューについては、まさにすかすかの内容でありました。そこにかいま見えたのは、個別の事業を国が主導して育成する、中央集権型のパターナリズム的な発想でありました。

 自立の名のもとに官や中央への依存を強めさせるのが官僚の手口であります。今回の地域再生法の一部を改正する法律案も、地方の国への依存を強め、地方分権に逆行するものであります。政策体系が曖昧なまま、抽象的な理念のもとに個別の支援措置を並べる手法は、国の介入の余地を拡大することになります。

 今や、意味ある政治の対立軸は、自立かパターナリズムかであります。

 自民党が自立の立場に立つのであれば、今回の両法案から自立への設計がどのようにして組み立てられるのか、石破大臣の見解を伺います。

 来年度予算に向けて、早速、各省庁から、ローカルアベノミクスに名をかりた総花的なメニューの概算要求が出ています。

 与党がこの地方創生を来年春の統一地方選挙対策としていることは見え見えであります。選挙対策のために国民の血税を費やし、次世代へのツケ回しをふやす政治は、次世代の党として、これ以上許すわけにはいきません。

 かつて日本維新の会が、複式会計、発生主義による公会計改革に基づいて、政府予算案を大きく圧縮した、引き締まった予算案を提案しましたが、その予算編成システムは次世代の党に引き継がれております。

 私たちは、来年度予算についても厳しくチェックし、財政規律強化の姿を提示してまいります。

 地方創生について、総理は、ばらまきはさせないとしていますが、それを担保する具体的な仕組みをどう講じようとしているのか、私たちが提案している公会計改革や財政健全化責任法案に対する所見とあわせて、総理に伺います。

 地方の再生に必要なのは、みずからの未来をみずから選択できる地方を生み出す新しい国づくりであります。日本の未来を描く営みに向けて、我が党の平沼党首は、これも安倍総理の所信表明演説から抜けていた憲法改正を、安倍総理にかわって代表質問で呼びかけました。

 停滞し始めたかに見える安倍政権の前を行き、そこに新たな道を開いて日本を前進させる機動力として、次世代の党は、今国会に全力を挙げて取り組むことを宣言して、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)


内閣総理大臣(安倍晋三君) 松田学議員にお答えをいたします。

 国会で審議すべき課題の優先順位についてお尋ねがありました。

 人口減少や超高齢化といった構造的な課題は深刻です。こうした中、若者が将来に夢や希望を持てる地方の創生や、女性に活躍の舞台を用意し、日本のあらゆる可能性を開花させることは、待ったなしの課題であります。同時に、国民の生活に直結する景気の現状にも慎重に目配りし、経済最優先で取り組むことは当然であります。

 社会保障改革や教育の再生、外交、安全保障の立て直しなど、内外の諸課題に引き続き全力を尽くしてまいります。

 さらには、国の形、理想を語る憲法についても、改正に向けた国民的な議論を深めていくべきと考えます。

 こうした諸課題について、次世代の党の皆さんとも、ぜひとも建設的な議論を行い、国家国民のため、ともに結果を出していきたいと考えております。

 なお、特別委員会の設置については、国会がお決めになることだと考えております。

 アベノミクスと消費税率引き上げについてお尋ねがありました。

 安倍政権では、デフレ脱却を目指し、三本の矢の取り組みにより、経済最優先で政権運営に当たってまいりました。

 この結果、賃上げは過去十五年で最高水準となったことに加え、企業の経常利益は過去最高水準となるなど、日本経済は、長期停滞やデフレで失われた自信をようやく取り戻しつつあります。

 したがって、アベノミクスが行き詰まっているとの御指摘は当たらないと考えております。

 今般の消費税率の引き上げは、国の信認を維持するとともに、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡し、子育て支援を充実していくためのものであります。

 他方、引き上げにより景気が悪化して、税収も増加しないという事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません。経済再生と財政健全化の両立、この道しかないと考えております。

 消費税率の一〇%への引き上げについては、予定どおり引き上げない場合のリスクも含め、経済状況等を総合的に勘案しながら、本年中に適切に判断してまいります。

 道州制についてお尋ねがありました。

 道州制の導入は、地域経済の活性化、経済成長を含めた国全体のさらなる活力と競争力の創出や行政の効率化などを目指し、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革であります。

 現在、与党において、道州制に関する基本法案の早期制定を目指して精力的に議論を行っており、この議論が集約されていくプロセスの中で法案が国会に提出されることになると考えており、政府としても、連携を深めて取り組んでまいります。

 次に、ばらまきをさせないための具体的な取り組みや公会計改革等についてお尋ねがありました。

 地方創生の推進に当たっては、私のもとに創設したまち・ひと・しごと創生本部のリーダーシップで、各省の縦割りを排除するとともに、施策の効果検証を厳格に実施していきます。また、地方発の取り組みをワンストップで支援し、国の示す枠にはめる手法をとらないこととし、ばらまきを排除してまいります。

 また、国の公会計制度に関しては、平成十五年度決算分より毎年、発生主義、複式簿記といった企業会計の考え方及び手法を参考として、国の財務書類を作成、公表しています。

 さらに、安倍内閣においては、経済再生と財政健全化の両立を図り、国、地方の基礎的財政収支に関する財政健全化目標の達成を目指しているところであります。

 なお、御党が御提案されている財政健全化責任法案の取り扱いについては、国会の会派間で決められるものと考えておりますが、法制化という手段そのものよりも、同様の趣旨を実現することこそが重要だと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)


国務大臣(石破茂君) 松田議員から二問頂戴をいたしました。

 まず、ローカルアベノミクスの新しい枠組みについてでありますが、企業収益の改善を賃金等を通じた所得の拡大と雇用の拡大につなげ、それが消費の拡大、そしてさらなる投資を生んで収益拡大につながるという経済の好循環を地方においても実現しようとすることが、ローカルアベノミクスの基本的な考え方と認識をしております。

 こうしたローカルアベノミクスを推進するとともに、地方においてより深刻な人口減少問題に正面から取り組み、地域の持つ優位性を最大限に生かした地域経済の好循環を実現することが、今回の地方創生の重要な視点であると認識をいたしております。

 こうした取り組みに当たりましては、これまでの国主導のやり方ではなく、地域住民の参加を得て、地方の個性を尊重し、地方の自主的な取り組みを国が後押しすることが重要であります。

 この認識のもと、各府省担当者だけではなく、地方公共団体関係者や有識者からヒアリングを行う基本政策検討チームを立ち上げ、検討を行っておるところであり、真に地方にとって効果が高く、使い勝手のよい、新たな施策を実行いたしてまいるものであります。

 次に、両法案から自立の設計がどのように組み立てられるかとのお尋ねでありますが、まち・ひと・しごと創生法案におきましては、基本理念や地方公共団体の責務において、地方公共団体が、事業者とも連携を図りながら、自主的に施策を実施することとされております。御指摘のようなパターナリズム的発想ではなく、それぞれの地域が主体的にまち・ひと・しごと創生に取り組むことが期待されるところであります。

 また、地域再生制度は、地方が主体となって自律的にそれぞれの地域の再生プランをつくり、それを国が支援する枠組みとなっております。

 今回の改正案においては、地方からの提案制度を盛り込むなど、支援についても、国からの一方的なものではなく、地方の声により耳を傾け、地方の実情に合ったものとなるよう制度を改正することといたしておるところであります。(拍手)

会議録全文