石原慎太郎先生党首討論(平成25年4月17日)


石原慎太郎君 来る四月二十八日に、総理が主唱されたようで、主権回復の日というのを天皇陛下の御来臨を仰いで行われるそうですけれども、大変結構なことと思いますが、私から言わせると、今更という感じがしないでもない。

 新しい政治家の諸君というのは敗戦後の占領軍による屈辱的な戦後史というものを詳細をみんな知らないと思いますし、その象徴の憲法というものを私たちこれから参議院でも議題にしようと思いますけれども、自民党の友党の公明党の党首は、これはいまだにこれを国民的なイシューとは思わないという発言をされているようですが、昨日の新聞にも非常にこの問題についてはリラクタントな発言をされていましたが、私は、この問題を乗り越えない限りはこの国は本当に再生しないと思いますよ。自民党も再生しないと思いますよ。私、あえて忠告しますけど、必ず公明党はあなた方の足手まといになりますな。(発言する者あり)いや、本当のことを言っているんだ。君ら反省しろよ。

 このところのまさに気違いに刃物の体を成している北朝鮮の去就を見ますと、私たちやっぱり憲法というものを本気で考えなくちゃいけないという実感を国民全体が持つに至ったと思いますね。これ、本当にある意味じゃ好機だと思いますけれども。

 とにかく日本に敵意を持っている北朝鮮にしろ中国にしろシナにしろ、こういった国が持っているミサイルの数というものと比較しますと、本当に空恐ろしい感じがするんです。

 このミサイル時代の戦術、戦略ということを考えますと、私たち維新の会はあえてその組替え動議を出しまして、改正案を出して、防衛費をもうちょっと増加をすべきだという提案をしましたが、これやっぱり過去の戦争、最近の戦争を見ても、第三次中東戦争でイスラエルが圧倒的に勝ったと。あれはやっぱりガブリエルという彼ら自身が開発した非常に優秀なシップ・ツー・シップ、シップ・ツー・エアーのミサイルの効果を証した。この間のフォークランド紛争でも、エグゾセというフランス製のシップ・ツー・シップのミサイルというものが大きな効果を上げて事を決めたと。

 こういったものを考えますと、これ本気で防衛費というものを増勢して、増加をさせてミサイルというものの防御網というものをきちっとつくり直さないと、この国は本当にいつどんな形で壊滅していくか分からないという気がするんですけど、総理、それ、いかがお考えですか。


内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま石原代表から重要な指摘をいただいたと思います。

 日本は、十年間ずっと防衛費を削減をしてまいりました。これは、言わば財政再建、健全化のために一律で削減をしてきたわけでございますが、かつての第一次安倍政権のときにも防衛費を削減をしました。この点は、私はかつての反省すべき点だったと思っております。

 防衛費は、他の省庁の経費と同じように国内を見て一律に削減するものではなくて、そのときの安全保障環境を見て考えなければいけないと、このように思います。その中において、例えば中国の防衛費は数年間で四倍になっております。二十四年間で三十倍以上増強されているわけであります。

 つまり、東アジアの安全保障環境のバランスが崩れようとしている中において、そのバランスが崩れることによって言わば不安定化が進み、日本に危機が訪れるかもしれない。これを防ぐためにはやはりバランスを取っていく必要があるんだろうと思います。

 その上において、日本は米国と同盟関係にありますから、日米同盟関係のきずなをしっかりと強化をしていくことと同時に、日本自体も防衛努力を進めていくべきであろうと。その観点から、二十五年度予算においては十一年ぶりに防衛費を増強したところであります。


石原慎太郎君 現憲法にはいろんな盲点があります。これは本当に随所を大幅に改革していく必要があると思いますけれども。

 憲法の改正というと、改正条項の九十何条だけじゃなしに、日本の防衛に関係する、安危に関連する九条の問題というものを皆さんフォーカスされますけれども、実は日本の国を大きくゆがめている会計制度というものに私は非常に盲点があると思うんですが、これを実は規制しているのが同じ九の九十条ですね。

 この九十条というのは非常におかしな法律でして、これはなぜか明治憲法以来変わっていない。これは、九十条で、内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出の決算を、翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とし、その審議を受け議決を経なければならない。これはとってもおかしな私は規定だと思いますね。

 会計検査院というのは、そのつまり顔ぶれを見ても、役人が役人調べてろくな指摘ができるわけない。これはざるで水をすくうみたいなシステムでして、こういうものを変えない限り、中央官僚は結局国家の予算というものを勝手気ままに使って、非常におかしな間違いがあるにしても、なかなかそれを指摘する機会が出てこない。私も何度か閣僚をしたときに、特に環境問題を扱っているときに決算委員会に呼び出されまして、三年前の水俣問題についての決裁について、私、よく分かりませんと言ったら、分からぬで済むかと。分かるわけない、内閣が三回も替わっているんですから。

 これやっぱり、要するに、会計検査院がどういう報告を出すか知りませんが、それはやはりきちっとした会計制度にのっとって議院が、要するに国会においてこれ決議、議決するということにしませんと、本当に野方図に予算が乱費されて、現況を見ても、特別会計というのはやぶの中で全く手が届かないじゃないですか。

 こういったものをやっぱり直さないと、中央官僚が財政というのを左右することでの高官支配というのは直ってこないし、私はそういう体質にうんざりして自民党を十八年前に辞めたんですけど。

 これは、やっぱり九十条というものを本質的に考え直す、こういうことをやっぱり本気に今度の内閣で考えていただきたい。私たちは日本の会計制度を変えるための法律を提案しますけれども、これに伴って、やっぱりこの九十条についてやっぱりもっと合理的に、きちっとした結果の出るような、ざるで水をすくうようなこういう手続というものはやっぱり私は変えないと、財政というものは健全化されてこないし、余計な支出が進んで全く国民が無駄をかぶるということになりかねないと思いますよ。

 もう一つ、更に申し上げたいのはTPPの問題でありますけど、ここに私、妙なものを持ってきました。(資料提示)

 ここには、非常にお目に留まりにくいと思います、小さな小さなこのステッカーが張ってあります、ここに。これは、遺伝子組換え農産物に関して、やっぱりカスタマーが、これに対して危惧を抱く人がいると思いますから、この製品は改良型の要するに食べ物ですということを明示するためにこういうステッカーを作って、日本で最大の要するに消費地である首都圏ですね、東京を中心にした埼玉、神奈川、千葉県で三千万近いカスタマーがいるわけですから、これを張らせることにしたんです。

 ところが、仄聞しますと、事前の交渉の中でアメリカがこれを嫌って、とにかく日本で販売するアメリカ製のDNA改良型の要するに食品からこのステッカーを外せと言っているそうだ。これは私は論外な話で、こんなことを許したら国民は激怒しますよ。

 とにかくこの問題についてはいろんな問題があって、賛否両論ある。例えば、イギリス人のこの問題に関与した専門機関のアーパド・パズタイという実は博士がこの問題に大変危惧を抱いて、はっきりコメントを出していますけれども、とにかくこれを食べさせたモルモット、ラットは非常に健康に障害を起こすと。前がん細胞が増殖の可能性が高まって、脳や肝臓や睾丸が萎縮し縮小して、一部には肝萎縮も見られ、生殖能力が落ちると。私はどちらを選ぶかといったら、絶対に遺伝子組換えの食品は取らない、私はやっぱり国民をモルモット化するのは好まないということを発言をしている。

 こういう事態がありながら、アメリカはやっぱり売ろうかなということで、日本がカスタマーの、国民の、消費者の健康を守ろうと思ってやったこのステッカーを外せといって、これは論外な話で、これは、こんなものを許容したら、この政府は消費者全体を敵にすることになりますよ。

 これは厳に総理から厳命して、交渉当事者にこの問題だけははっきり日本側の主張を通させてもらいたい。こんなものを野方図に許したら、TPPもあったものじゃない。人を殺してでも物を売ればいいという、そんな国家のエゴが通るわけがない。これは私はとても大事な問題で、是非これを忘れないで、とにかく厳命して、こういうことで絶対一歩も譲らないという、そういう交渉を続けていただきたい。

 これは、私はある意味でこのTPPの問題の非常に象徴的な問題になると思います。これ、やっぱり国民の安全、健康というものをいかに守るかということを放棄した、これは、そういう政府というのは国益を放棄したと同じことになると思いますから、これはひとつ強くこれを念頭に置いて頑張っていただきたい。

 それで、もう一つ加えて申しますが、尖閣の実効支配というのは、よく言いますけれども、具体的にどういう形で今の政府はあの尖閣諸島を実効支配しているんですか、具体的に。


内閣総理大臣(安倍晋三君) まず初めに、食品の安全、消費者の健康、これはまさに最大の国益でありますから、もう既に交渉当事者に対してこの点については絶対に譲ることはできないということについて厳命はいたしております。

 そして、尖閣についてでございますが、この尖閣については、もう歴史的にもあるいは国際法的にも日本の固有の領土であることは疑いのないことでございますが、実効支配ということについては、我々、あの日本の領海そして接続水域において、海上保安庁の船が日本の実効支配を守るためにしっかりと二十四時間の体制でそこに存在をして、日本の言わば支配、実効支配、有効な支配を確立をしていると、このように思います。


石原慎太郎君 私がアメリカのヘリテージ財団でのアドレスで、東京都が思い余ってこの島を買うつもりがあるということを言ったときに、瞬間的に十五億円近い拠金というものが全国から寄せられました。

 これはいろんなエピソードがありまして、中には、手紙も添えられていて、私たちは家族三人で貧しい生活をしておりますけれども、せめて志として一人当たり一万円の拠金をしたいと、こういう手紙が添えられて、私は本当に涙が出た。それから、東北のやっぱり田舎のかなり老齢な婦人から、私は未亡人で今後のためにささやかな貯金をしていますけども、もう亭主も亡くなったんで、日本のことが心配ですから、これかなりな十万円単位の拠金をしてくださった。ところが、東京都が指定している東京のメーンバンクのみずほ銀行は私の村にはございません、ですから、拠金をするためにみずほ銀行のある隣の町に一時間バスに乗って行ってとにかく納金しましたと。こういう人もいるんですよ。

 で、私は急遽、それを聞いて、要するに郵便貯金に口座を開いてですね......


会長(鈴木政二君) お話し中ですけれども、石原代表、時間が過ぎておりますので、おまとめをください。


石原慎太郎君 はい。

 ひとつこれを念頭に置いて、やっぱり、人を置くなり、何らかの政府が金を出してその一つのインフラというものをあの島に造っていただきたい。それを示さない限り、あの島は本当に手付かずのまま放置されているので、シナが勝手なことを言うでしょう、それに付け込んで。私は、これはやっぱりある形で、とにかくこの島を日本が責任を持って、政府が責任を持って守るんだということを国民に示すということがやっぱり私は安倍内閣にとって大事な大事な一つのレーゾンデートルになると思いますよ。ひとつとにかくはっきりした形でこれを国民に示していただきたい、それを熱願いたします。

 終わります。ありがとうございました。(拍手)


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