石原慎太郎先生党首討論(平成26年6月11日)


石原慎太郎君 我が維新の会は、残念ながら分党いたしました。その原因は、国家の命運を左右しかねぬ問題、すなわち自主憲法の制定と集団自衛権の問題での党内での食い違いであります。維新の党内には、他の党との合流を熱願する向きがありました。その相手の何とかいう党の党首は、集団自衛権には反対、自主憲法制定などと言ったら外国からとんでもない誤解を受けかねないと公言しておりますが、これは昔の消えてなくなった社会党と同じような言い分ですね。

 一体その、他のどの国の憲法も自主的に制定され、何度も自主的に改定されているわけですけれども、これがもう世界の常識だと思いますが、総理、いかがお考えですか。


内閣総理大臣(安倍晋三君) そういう意味におきましては、今、石原代表が質問されたように、ドイツを始め多くの国々が、その時代時代に合わせて、その要請に応えて憲法を改正をしているわけであります。であるからこそ、我々自由民主党も、二十一世紀にふさわしい憲法について、既に草案を取りまとめ提出をしている次第でございまして、幸い、国民投票法、これは第一次政権で成立をいたしまして、今回、年齢要件等について新たな法律が今議論をされ、まさに成立をしようとしているところでありまして、今後更に国民的にこの議論が深まっていくことを期待したいと思います。


石原慎太郎君 最近の中国の露骨な覇権主義のやり方を見ていますと、これはもう世界中のひんしゅくを買っているわけですが、ごく最近のベトナムの領海の中で起こったあの事件の映像を見ても、自分でぶつかりながら、ぶつかったのはベトナムだと言う、まさに黒を白と言い張る盗人たけだけしい言動でありますけれども、こうした不祥事のたびに政府を代表して菅官房長官が遺憾の意を表明されておりますが、実はその心中を私は思いやるものがあると思いますね。これは、国民は怒っているんですから、遺憾の意じゃなしに、あなた、怒りの意と表明してもらいたい。

 日本をめぐる諸般の状況からしても、やがては集団的自衛権の発動もあろうと思いますけれども、そのときに、どうかひとつ政府としては、過去の苦い経験というものを思い起こして、国益を損なうことのないように努力していただきたい。

 私が思い起こしますのは、かつて日本に非常に大きなコミットメントを強いたあの湾岸戦争。これは、フセインが突然一方的に隣のクウェートを侵犯したあの戦争でありますけれども、これ実は、アメリカがイラクにおける石油の利権のためにたくんだ実に作為的な戦争だったということが後に分かった。

 これ、レーガンの時代に副大統領だったブッシュと、それから後に彼の国務長官になるベーカーが画策しまして、チリにダミーの会社をつくって、それを通じて膨大な金と武器というものをフセインに供給した。この実態を暴露したのがピューリッツアー賞の受賞作家であるアラン・フリードマンでして、彼の書いた「スパイダーズウエブ」、クモのわなですか、網、日本語訳は「だれがサダムを育てたか」という本に書いてありますけれども、これを非常に嫌ったブッシュがこれを迫害しまして、この調査中にフリードマンは自分の身の危険を守るために数人のガードマンを付けて離さなかったという挿話があります。

 いずれにしろ、このとき、覚えていますけれども、突然、財務長官のブレディが日本にやってきまして、時に海部内閣でありましたが、海部内閣の閣僚の橋本大蔵、中山外務ですね、それから武藤通産、それから坂本官房長官を、今なくなりましたオータニの近くの福田家という料理屋に呼び付けて、そこでいきなり、とにかく戦費を調達するから四十億出せと言った。これ当然、驚いた四人の閣僚が断りましたが、ブレディが三度同じことを繰り返して、これ聞かないならば日米関係悪くなるぞと、あなたの責任だから、ちなみに名前を、四人の名前を教えてくれと自分の手元にメモをしたと。これで動転した中の閣僚の一人が立ち上がって本部に電話して、時の幹事長は小沢一郎君でした。それから、実質的に自民党を牛耳って政府を牛耳っていたのは金丸信という好ましくない政治家でしたけれども、これに相談して即座に四十億を出したんです。

 そして、ブレディは四時間日本に滞在して、帰ってワシントンで記者会見をしました。その内容は、私たまたま、外人記者クラブのメンバーでして、たまたま古い見知りの向こうのベテランの記者からコンフィデンシャルの情報として記者会見の模様を聞きました。これ非常に屈辱的なもので、私はそのときに同席していた日本の何人かのメディアの支局長に聞きましたが、まさにそのとおりだということでしたけれども。

 ブレディは、四時間でとにかく四十億せしめたということで、大成功じゃないかと言われたが余り機嫌が良くなかった。一体なぜ機嫌が良くないかとアメリカのメディアが聞きましたら、俺は二日間掛かると思ったけど、あいつら三度脅かしたら簡単に出したと、最初からもうちょっと吹っかけりゃよかったと言って、アメリカの記者はみんな大笑いするわけです。日本の記者は本当に屈辱的に下を向いていましたが、何人かの記者から同じことを聞きましたよ。

 そして、彼らは図に乗って九十億ドルの上乗せをとにかく請求してきた。私そのとき議員でおりましたけれども、九月に臨時国会を開いて、これはさすがに政府の一存で出すわけにいかない膨大な金ですから、追加九十億ドル出して、戦費でです、すなわち百三十億ドルの戦費を日本が調達したんです。そして、アメリカはあの戦争、何とか勝ったか負けたか分かりませんが、ああいう形で終結したと。

 その後、一体アメリカは何を言いましたか。日本はあの戦争に参加せずに血を流して戦わなかった、そしてけしからぬということで、秋に予定されていた日米首脳会談はやらないと、棚上げすると恫喝されて、海部という余り好ましくない総理は慌ててサンフランシスコまで言い訳に行って、あそこでとにかく懇願して日米首脳会談を開くことになりました。

 その後、ブッシュはもったい付けて、真っすぐ日本に来るわけにいかないから、言ったことの手前、オーストラリア、ニュージーランド、それからインドネシアですか、幾つかアジアの国を遍歴した挙げ句で日本にやってきまして、多分くたびれていたんでしょう、宮中の晩さん会で天皇陛下の横で疲れてげろ吐いたんですよ。これは本当、アメリカにとって国辱だったと思いますよ。

 そういういきさつがあって、日本はとにかくあの戦争に関して、非常に孤立無援といいましょうか、一方的な非難、中傷を受けましたけれども、実は、日本のやった貢献というのは金だけじゃなしに大変なものだった。その後に出ましたペンタゴンの要するに公式の文書の中には、イギリスは八万の軍隊を送って一緒に戦ったけれども、日本のやった功績はその数十倍だと書いてありました。これは私の悪名の高い、アメリカでは悪名の高い「「NO」と言える日本」の中に詳述してありますけれども。

 皆さんも御記憶があるでしょうが、あの戦争の初めに、アメリカのミサイルは何とバグダッドの、要するにイラクの参謀本部の近くの煙突からとにかく突入して、何階かにあるコンピューターを爆破して、あの戦争というのを有利に導いた。

 それだけじゃなしに、制空権を得るために砂漠に配置したたくさんのハリアー型戦闘機、これは垂直上昇型の戦闘機ですけれども、ペルシャ湾は非常に狭くてたくさん航空母艦を持っていくわけにいかないんだ。たくさんの飛行機を離発着させているうちに相手の領海に入ってしまいますからね。結局、彼らは、それを画策したのは、代わりに画策したのは、垂直上昇型ハリアー型戦闘機というものを量産して、これを、砂漠を削って、砂漠というか硬い土ですけれども、そこから離発着させた。

 この垂直上昇型の戦闘機というのは離陸するときに非常にロードが掛かって、ちょうど体操の選手のつり輪みたいなものですね、体をつり上げるときに非常にロードが掛かって、翼と胴体がもろくて、要するに壊れてしまうんです。これをくっつける、要するに翼を胴体につなげる部品というものを調達しようと思ったけど、これを製造するために削る工作機械がない。これはリチウムアルミという非常に硬度な金属でできている部品ですけれども、これ世界中に捜査したけれども、これを作る機械を持っている国はなかった。ということで、どこが応募したかというと、日本の松浦機械という北陸のこれ中小企業ですけれども、このメーカーがこれに応募しまして、アメリカの要望に応じてハリアー型戦闘機が離発着できる部品というものを作った。

 これによってアメリカは制空権を一方的に取った。だけではなしに、地上戦闘が始まったときに、偵察は主に戦車で行われますが、戦車対戦車の戦闘ですね。日本が提供した、日本の自衛隊しか持っていなかったコンピューターを、これを装備して、一旦停止して相手を視認すると、その距離と角度というものを計算して、即座にその大砲の仰角を決めて発射のセットをする。これによって、一方的にアメリカの戦車は、イラク側の戦車、ロシア製の戦車を打ち破って地上戦闘で圧倒的な勝利を得た。一旦戦闘が始まってみると、続々陸軍の兵隊が死ぬと思われていたけれども、一人も死なず、ほとんど死なずに相手を制圧したといういきさつがあります。

 これをもってアメリカは、金だけじゃなしに、日本がやった功績というものはイギリスの協力よりもはるかに膨大なものだということをとにかく喧伝してくれたんですが、これ、私たち、余り知っているようで知らない事実でありますけれども、日本はそれだけのコミットもしながら、結局、外交が拙劣なのか何か知りませんけれども、そのアメリカのそしりを受けて、結局その代償に、あの後、イラク側がペルシャ湾にばらまいた機雷の掃海作業に出かけていって、これは見事に果たして評価もされましたけれども。

 しかし、とにかく、こういう、何といいましょうか、屈辱的な、国益を実質的に喪失するみたいな集団自衛権の行使というものは私たちはやっぱり反省しなくちゃいけないと思います。これからいろんなケースが出てくるでしょうけれども、とにかく日中間にも非常に大きな緊張が今構えられていますが、この事態の中で私たちはアメリカとの関係を重視しなくちゃいけませんけれども。

 総理に知っていただきたいのは、最近のアメリカの公文書では、日本があの戦争に調達した戦費というのは百億ドルだと。実際に出したのは百三十億ドルですから、あの三十億ドルはあとどこに行ったんでしょうか、これは。誰がどうやって分けたんですか。こんな面妖な話はありませんが、いろいろうわさがありましたけれども、日本のメディアは度胸がないんだ、能力がないからこれをフォローしなかった。日本側にもそのシェアを受け取った人がいると思いますけれども、こういうことが今後絶対に起こらないようにしていただきたい。

 いずれにしろ、これから日中間の問題、いろいろ問題あると思いますが、中国は、はっきり言いますと、オーシャンネービーを保有しておりません、これは中国にとって決定的な私はハンディキャップだと思いますけれども。

 こういう状況の中で、アメリカは非常に衰退の兆しが強いんですが、しかしやっぱり、アメリカは依然として世界一のタスクフォースの第七艦隊を日本を拠点にして保有しておりますけれども、この第七艦隊にとって日本の海上自衛隊の対潜能力というのは絶大なものでして、それに対する非常に期待は大きいんです。その関係の中で私は日本としての自主性を保つべきだと思いますし、例えば情報の正確な共有というものは不可欠だと思います。

 これは、具体的に申しますと、佐藤さんのようなベテランは御存じでしょうけれども、ミサイルでの空中戦闘の際の日本は独自のGPSというのを持っていないんです。これはアメリカが保有して、アメリカの要するにGPSに従って日本がそういった戦闘を行使しても効果が上がりにくい。例えば、例の湾岸戦争なんかでイギリスはこれにコミットしてミサイルも発射しましたが、アメリカは、その功績が上がって戦争が終わった後の利権の配分というものに支障を来すので、わざとターゲットをそらすみたいな操作をしたんです。これに懲りて、イギリスはアメリカに腹を立てて、イギリス独自のGPSというものを装備するようになりました。

 これは、私は、日本の要するに集団自衛権のこれからの行使のために、日本の自衛隊の要するに確実な功績を上げるためにも絶対に必要な装置だと思いますけれども、是非これを念頭に置いて、日本独自のGPSというものを専門家に相談して日本は装備するようにしていただきたい。この点でアメリカに頼らずにいただきたい。

 これひとつお願いします。いかがですか。


内閣総理大臣(安倍晋三君) 先般、防衛大綱も決定をしたところでありますし、国家安全保障戦略を初めて策定をいたしました。その中において、我々独自の日本の国を私たち自身の手で守るという考え方、基本的な考え方の下にしっかりと国民の命を守っていきたい。当然、日米同盟、強い日米同盟を維持をしていく、これも基本であります。


会長(長浜博行君) 以上で石原慎太郎君の発言は終了いたしました。(拍手)


石原慎太郎君 非常に大事な質問をしようと思ったんですがね。一つ、これだけ許してください。


会長(長浜博行君) いや、石原君、時間が終了しております。時間が終了しております。


石原慎太郎君 じゃ、また後日。


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