石原慎太郎先生衆議院本会議代表質問(平成25年10月16日)


石原慎太郎君 まずもって、台風二十六号が多大な被害をもたらしましたけれども、なかんずく、私のもとの選挙区でありました伊豆の大島では、土砂災害で数十人の死者、行方不明者を出しました。心からお悔やみを申し上げ、お見舞いを申し上げます。

 今から四十三年前、私が敬愛しておりました、天才とも言われていた作家の三島由紀夫氏は、この日本の国家と民族の将来を憂い案じて、あげくに、有志を募り、市ケ谷台の自衛隊の本部に乱入し、隊員たちに決起を促しましたが、かなわずに自決をいたしました。三島氏が案じていたこの国は、それから彼の懸念のとおりに、心身ともに衰弱の道をたどり、今日の姿にあります。

 彼が自決する一年ほど前に、私と彼との共通のすぐれた友人であったフランス文学者の村松剛氏が、カナダのトロントの大学に交換教授として赴いて、日本文化について講義した後に、帰国の途中、ニューヨークに立ち寄って、アメリカの代表的な新聞であるニューヨーク・タイムズの本社に寄りまして、日本が降伏した八月十五日、その日のニューヨーク・タイムズの論説と、同じ年の春にドイツが降伏したときの論説のコピーをつくって持ち帰り、私たちに提供してくれたのでありました。

 この二つをあわせ読みますと、極めて対照的であります。

 ちなみに、若い議員の諸君は御存じないでしょうが、日本とドイツの降伏の仕方は、かなり対照的に違っております。

 日本は、瞬時にして数十万の人命を奪った原爆に腰を抜かして、無条件降伏をいたしましたが、ドイツは、三つの条件をつけて降伏をしました。第一は、戦後のドイツの基本法である憲法は自分たちがつくる、第二は、戦後の子弟の教育はドイツ人自身が決める、第三は、規模が何であれ、性能が何であれ、ドイツの国軍はこれを保有するということであります。

 これを踏まえて、ドイツの降伏に関してのタイムズの論説は、彼らの論調は、このすぐれた民族は、ナチスによって道を誤って戦争を起こしたが、敗れはしたが、この反省の上に立ち直って、新しい立派な国をつくるに違いない、それに我々は全面的に力をかして、立派なドイツの再興を助けようということでした。

 これと非常に対照的に、日本の降伏についての彼らの論調は、論説の紙面の横に大きな漫画が描かれておりまして、その漫画は、巨大なナマズの化け物のような怪物が倒れて横たわっていて、そのあんぐりあいた大きな口の中に、アメリカ兵が鉄かぶとをかぶって入って、やっとこでその怪物の牙を抜いている漫画でありました。

 そして、その解説に、この醜く危険な怪物は、倒れはしたが、まだ生きている、我々は、アメリカの安全のために、世界の安全のために、あらゆる手を尽くして、いかなる時をかけてもこの怪物を完全に解体しなくてはならないとありました。

 あの日本の敗戦に対するニューヨーク・タイムズの論説の背景には、歴然としたレイシズムによる人種偏見があると思います。

 それは、近世、近代にかけて、産業革命の余力を駆って、有色人種の国土をほとんど植民地化してきた白人のレイシズムによるおごりの露骨なあらわれでしかありません。そして、根底には、そうした偏見にのっとった、敗戦国日本への、統治の名前をかりた徹底的な解体が行われてきたわけであります。

 その有効な手段として、歴史的に正当性のない憲法が見事に活用され、その絶大な効果を生みました。新しい憲法を起点に、アメリカの、戦後の日本に対する統治が始まったわけであります。そして、その日本の解体統治のための一つの手段として、彼らが一方的に速成した、極めて醜い日本語の前文でつづられた憲法が押しつけられ、私たちは、それを拝受し、今日までアメリカの囲まれ者としての時を費やしてきました。

 この憲法についての論議が国会でようやく正式に始まろうとしておりますが、私たちは、この際、哲学者ヘーゲルが言った、国家、社会にとっての重要な問題の成否を論じる際の判断の原理は全て歴史の中にあるという言葉を想起し、事に臨むべきだと思います。

 人間の歴史は多くの戦争を繰り返してきましたが、戦争の後に、戦勝国が敗戦国を統治するための手段としてつくって押しつけた法律が、半世紀を越しても有効に敗者を拘束してきた事例は、歴史には全くありません。ということを鑑みれば、歴史を踏まえて、私たちが拝受した現行の憲法には、歴史を踏まえての、歴史的な正当性が全くないということが言えるはずであります。

 ということについて、総理はいかがお考えでしょうか。私たちが拝受し続けてきた現行の憲法に果たして歴史的な正当性があるのかないのかということを、まずお伺いしたい。

 私は、比較的若く世の中に出たために、当時まだありました文壇の行事を通じて、吉田茂総理の側近中の側近と言われた白洲次郎氏との知己を得ました。そして、何度か氏から直接諭されました。

 吉田茂というすぐれた政治家にも、犯した大きな問題がある、その最たるものは、自分も同行して吉田内閣が調印したサンフランシスコ条約によって日本がようやく独立を獲得した後に、これを踏まえて、吉田総理は、アメリカがつくって与えた憲法を無効とすべきであった、それをしなかったことが、吉田さんの、政治家の最大の誤りだということでありました。

 総理は憲法の改正に並々ならぬ意欲をお持ちのようですが、そうした論評を踏まえて、この際、はっきりと、現行の憲法に歴史的な正当性があるのかないのか、それについてお考えを披瀝していただきたい。イエスでありますか、ノーでしょうか。

 もし、以上の言葉を鑑みて、この憲法に歴史的なレジティマシー、正当性がないならば、あなたは、日本という国家の最高の指導者としての責任で、この憲法の無効を明言されたらよろしいと思います。そして、その憲法について、論議はまさにそこから始まるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。

 日本という国家は今さまざまな受難に直面しておりますが、その最たるものの一つは、かつてアメリカが日本を占領していた領土の一部である沖縄を正式に返還し、その沖縄の一部である尖閣諸島へ中国が理不尽な主張を繰り返し、尖閣に対する露骨な侵犯を繰り返していることであります。

 私は、かつて、国会議員の時代に形成した青嵐会の仲間と一緒に、この尖閣についての強い危機感を抱き、募金して、せめてその一部の小さな島でも購入して所有を維持しようと発議して、当時の地主であった沖縄在住の古賀花子さんと面談しましたが、残念ながら、その寸前に、古賀さんは、大宮の栗原一族に島を売却したということでありました。

 ということで、私は、早速、大宮に赴き、栗原家の先代の当主であったおばあちゃんに面談して、尖閣諸島をぜひ一部でも譲渡していただきたいという申し出をしましたが、一族は、日本の政治は全く信頼していないということで、拒否されました。

 ただ、そのときの会話の印象で、彼女は私にある信頼感を抱いたようで、それが家族に伝わり、彼女の没後、当主の栗原氏が、財産の運用にそごを来して、母上の残した言葉を想起し、私にならば尖閣諸島の譲渡について相談したいということを彼の知己でもある山東昭子議員に漏らし、彼女がそれを取り次いでくれまして、私は、栗原氏と面談を重ね、島の譲渡の交渉を続けてきました。

 しかし、その途中、栗原氏は、東京都が提示した額に上乗せをした金額を提示した野田政権に、私に無断で売却を決定してしまいました。

 国家がこれを購入したということで、尖閣諸島の領有を執拗に主張してきた中国政府は、これを国家対国家の問題として把握し、日本の尖閣に対する施政権に対する執拗な侵犯、妨害を続けております。

 私がアメリカのヘリテージ財団での講演で、東京都は、地主の意思を受けて、東京都の責任でこの島々を購入するつもりがあると発言した途端に、尖閣について憂慮している多くの国民たちから、ほとんど瞬間的に、十五億円という、尖閣購入の協力の寄金を得られました。

 その多くの人々が献金に添えてきた手紙の数々は極めて印象的なものでありました。

 ある方々は、私たちは一家三人のごく貧しい家族であるが、尖閣を購入して国土として守り抜くために、わずかではあるけれども一人一万円の献金をいたしますと、貧しいながらの家庭から、合わせて三万円もの献金をいただきました。

 また、青森県の寒村に住む老婆は、尖閣購入のために東京が発表した指定の銀行、みずほ銀行が彼女の村に存在しないので、その銀行がある隣の町へ一時間以上バスに乗って出向いて、一万円の寄附をしてくださいました。そして、その添えられた手紙には、私の周囲には、貧しい村ながら、この試みに協力したいという意思を持つ人たちが数多くいるので、どうか、村にもある郵便局に献金の口座を開いていただきたいということで、東京都は、早速、日本じゅうの郵便局に口座を開く措置をいたしました。

 こうした国民の国を思う意思というものを、総理は、どう感じ、どう受けとめられますか、そして、それに対してこれからどう実際に応えていくつもりであるか、具体的な返事をいただきたいものであります。

 当節、アメリカは、あちこちの戦争に首を突っ込んで国力を疲弊させ、厭戦気分が蔓延して、シリアの化学兵器の使用の問題に対しても国民のほとんどが背中を向け、結局、外交での論戦の中でアメリカはロシアの言い分に屈した形になって、その威信を低下させました。

 いずれにしろ、私たちは、同盟国であるアメリカと結んでいる日米安保条約というものを踏まえて、この尖閣の堅持という、施政権の行使について考えるべきだと思います。

 アメリカは、最近まで、特に前のオバマ政権でのクリントン国務長官は、はっきりと、尖閣諸島は日米安保の対象たり得ると明言しておりましたが、最近のアメリカ政府の高官は、なぜか言葉をいささかかえて、日本の政府の施政権の及ぶ地域についてのみ安保は発動され得ると、いささかニュアンスの違う表現でこの問題に言及しております。施政権の行使というのは、具体的にどういうことなんでしょうか。

 現在、保安庁の船は、あそこで操業している日本の零細な漁民を駆逐しようとしてかかる中国の公船を日本の漁船のために阻むべく、その間に立って非常に際どい運航を繰り返しておりますが、私は、もっと明確に万民が納得できる形での施政権の行使というものを政府は考慮すべきだと思います。

 それは、端的に言って、この非常に岩礁の多い危険な水域を通過する全国家の船舶の航行の安全のために、あくまでも人道的な見地で、あの魚釣島の一番高い山の頂上に灯台をつくるべきではないでしょうか。これは、あくまでも航行の安全、そして海を行く人々の生命の安全を担保するための極めて人道的な措置であって、これに異議を唱える理由はどこにもあり得ないと思いますが。

 かつて青嵐会が、仲間内で拠金して、関西の大学の冒険部の学生に依頼し、あの島にちゃちな、灯台というには及ばない、バッテリーに、柱につるした電球にコードをつなげる簡単な灯台を建てた後、政治結社の日本青年社が、過重な労働の末に、一人死者まで出して立派な灯台をつくってくれましたが、私はそれを非常に多として、運輸省の水路部に依頼し、これを正式な灯台として認可するために足りない部分を指摘してほしいということで、その専門家の指摘を受けて、日本青年社はさらに費用を費やし、専門家が見て認可し得る灯台に仕立て直してくれました。

 しかるに、これを海図に正式に記載すべく行動を起こしたときに、腰抜けの外務省は、これをなぜか時期尚早ということで阻止して、ついに、それから二十年近くも、日本人が日本の領土につくった正式な灯台を、外務省は海図に正式に記載することを拒んできました。これはむしろ、近くを航行する船舶にとって非常に危険な措置であって、定期的に光を発する発光物がチャートの上で何であるかが不明であることは、航海の危険を招く間違った措置にほかなりません。

 いずれにしろ、私は、あの魚釣島に、日本の政府が、日本の国土としての魚釣島に、世界各国の船舶の安全を担保するために、周囲から見やすい確かな灯台を設立すべきだと思います。それこそが魚釣島に関する日本の施政権を明示する最も容易な行為だと思いますが、いかがでしょうか。

 もし、そして、それを中国が拒否し、妨害しようとするならば、その灯台の人道的な意味合いを踏まえて、尖閣問題の決着を図るべく、政府はハーグの国際裁判所に事の是非を問うて提訴すべきだと思います。

 そして、裁判所の規約では、この提訴に応じない相手国は応じない理由を明示する必要があるとありますが、恐らく、その際、中国は、得手勝手な歴史観を踏まえて、筋の通らない主張を繰り返すに違いありませんが、しかし、それはそれで、一つの尖閣問題に対する世界全体の正確な認識を得るための第一歩であると私は思います。

 恐ろしいことに、現在、この尖閣諸島の領有権に関する悶着に似た問題が、日本の領海を越えたフィリピン、あるいはベトナム、インドネシアの領海でも起こりつつあります。

 特に、南シナ海のスプラトリーにおける微細な岩礁に関しての中国の露骨な侵犯は、弱小なこれらの国家にとっての大きな脅威となっておりまして、この際、そうした脅威、危機を共有する日本が提唱して、フィリピン、ベトナムあるいはインドネシアと協力して、私たちがその施政権下にある領土を堅持し、確保するための強力なアライアンスを外交的、防衛的に展開する必要があるのではないでしょうか。

 また、加えて申し上げますが、私が都知事として在任中に、日本の国土から隔絶された領土の一つでもある沖ノ鳥島を、中国は、あの岩は決して国土とは言えないということで、領海にたびたび侵犯し、漁船を送って、一方的な漁業での収奪を繰り返しておりました。

 私は、東京都の漁業組合長である菊池組合長という非常にしっかりした人物に依頼して、東京都で大きな船をつくって任せ、あそこに小笠原の漁民の漁業のための魚礁を設け、漁獲をふやし、そして、かつて自民党時代につくられた、廃墟に近くなっている、あの環礁の中に建っている建物の柱を利用して灯台をつくりました。

 それによって、最近では日本以外の外国船のあの領海侵犯はなくなりましたが、こうした努力を政府は参考にして、例えば、新しい大型の漁船を仕立て、漁業会社を新規につくり、沖縄の漁民を乗せて、尖閣諸島で乱獲を繰り返している外国の漁船に対抗して、日本の漁民が日本の領海で漁獲を上げる正当な作業というものを助成すべきではないでしょうか。

 私は、現に、菊池組合長に依頼してその調査を進めておりますし、石垣市も、石垣市の漁民のためにこれに協力することを約束しております。

 これが実現の途についたときには、国はこれを積極的に援助していただきたいと思うことを重ねて申し上げます。

 しかし、このところ執拗に繰り返されている、頻度を増した領空、領海への中国の侵犯に、政府は一体どこまで本気で対処するつもりなんでしょうか。

 過去には何度か、中国の潜水艦は全く無断で日本の領海の海峡を潜水したまま通過しました。もし、これと同じことを日本の潜水艦が中国に対して行った場合、彼らは、恐らく爆雷を投下して、これを威嚇し、排除するでしょう。たとえ友好国でもある韓国の領海に対して、もしも日本の潜水艦が無断に潜入しても、同じ目に遭うはずであります。

 そして、最近では、無人とはいえ、遠隔操作されている航空機が日本の領空を侵犯してきましたが、一体、この目的は何なのか。一体、何を搭載し、何のためにこうした無人の飛行機が飛来したのか。

 これに対して航空自衛隊はスクランブルをかけたようですけれども、この際、この無人の、目的がわからず飛来した飛行機というものを、無人なりに、無線を使った警告が不可能な限り、危険を防ぐために相手の無人機を撃墜した場合、交戦規定が全く不備のまま、一体、事がどうなるかということを想定した果断な措置をとるべきだと私は思いますが、いかがお考えでしょうか。

 いずれにせよ、かかる現況の中では、事に臨む自衛隊の隊員の判断任せではなしに、彼らが着実に任務を遂行できるように、速やかに戦時諸法を作成する必要があると思います。交戦規定を含めた戦時諸法を作成する必要があると思いますが、いかがお考えですか。

 もう一つ加えて申し上げたいが、ブエノスアイレスでのIOCの総会で、出席願った安倍総理が、各国が懸念している日本の原発での放射線を含んだ漏水事件について、総理の権威を構えてきっぱりと否定してくださったことは、東京へのオリンピック招致への一番の大きな引き金となり、最大の功績であったと私は思います。

 そして、七年先の東京オリンピックの開催が決まりましたけれども、私が懸念していることは、これは国交省も十分承知していることでありますけれども、首都圏での外国からやってくる飛行機の受容能力は、あと五年で限界に達します。

 その際、東京の真ん中にある、余地を含めれば日本最長の四千メートルの滑走路を持つ横田の基地を、有事の際には軍事専門に使用させるけれども、その条件で、現在、軍民共用化してオリンピックのためにこれを活用するために、かつて、小泉時代にも、私が首相に依頼してアメリカとの首脳会談で提案してもらい、日米間の国家マターとしての登録をいたしましたが、その後、結局はアメリカのエゴがまかり通り、依然として放置されたままであります。

 しかし、現にオリンピックの開催が決まった今、この横田のほとんど未使用の、ただのロジスティックの作業のために放置されている飛行場をオリンピックのために活用すべく、せめて今後、軍民共用するという提案を、ぜひ日米の首脳間で日本側から提案して、実現していただきたいと思います。

 かつて、小泉総理時代に、日本と韓国が共同でワールドカップの選手権を行いました。その際、私は韓国側の高官に、ある筋を通して、韓国は従来の金浦空港を閉鎖して仁川に巨大な国際空港をつくって金浦があいているので、金浦と横田の間に、CIQを抜きにして、観客と選手たちの往来の便宜のために横田の空港を活用しようということで、向こうは喜んで賛意を表してくれましたが、何とアメリカは、小しゃくにも、ワールドカップ開催中に、向こう五十年間使用できるように、日本の資金であの飛行場の滑走路を補強、補修するための作業をし、あの飛行場をその間閉鎖してしまいました。この巧妙でしたたかなやり口に私は抗議しましたが、及ばずに、結局、横田は、そのまま滑走路を補強して、放置されたままであります。

 どうか、国家的な、社会的行事でもある東京でのオリンピックの成功のためにこそ、あの横田を米国と協力して活用すべきこと、この提案を総理からぜひしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 終わります。(拍手)


内閣総理大臣(安倍晋三君) 石原慎太郎議員にお答えをいたします。

 現行憲法の正当性についてのお尋ねがありました。

 現行憲法については、私は、我が国が占領されていた時代に、占領軍の影響下でその原案が作成されたものと認識しています。その成立過程については種々の議論がありますが、現行憲法は、最終的には帝国議会において議決され、既に六十有余年が経過したものであり、有効なものと考えております。

 尖閣諸島に関する国民の思いについてお尋ねがありました。

 御指摘されたように、多くの国民の方々が国を思う意思を表されたことについて、私は、尖閣諸島を何とかして守ってほしいとの真摯な気持ちの発露であったのではないかと感じています。

 尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しません。

 私は、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意で、毅然かつ冷静に対処していきます。それが、国民の皆様から求められている、日本政府として果たすべき責務であると受けとめています。

 施政権についてお尋ねがありました。

 施政権の行使とは、一般に、行政、立法、司法上の国家の権限を行使することを意味すると解されていると承知しています。

 尖閣諸島について言えば、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土です。現に我が国はこれを有効に支配しており、我が国の施政のもとにあります。

 米国政府の立場については、以前から、尖閣諸島は日本の施政権のもとにあり、日米安保条約第五条の適用範囲であるというものであり、この立場は、先般の2プラス2を含め、累次の機会に表明されてきているところであります。

 魚釣島への新たな灯台の建設についてお尋ねがありました。

 尖閣諸島及び海域を安定的に維持管理するための具体的な方策については、さまざまな選択肢がありますが、実際にどのような方策をとるかについては、まさに戦略的観点から考えていくべきものと考えております。

 尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、今後とも、自国の領域を守り抜くという断固たる意思を持って戦略的に対処していきます。

 海洋の安全保障についてお尋ねがありました。

 海洋は、開かれ、安定したものでなければならず、その秩序は、力ではなく、法により支配されなければなりません。海洋は重要な国際公共財であり、我が国は海洋安全保障を重視しています。

 南シナ海をめぐる問題は、地域、国際社会共通の関心事項です。全ての関係国は関連国際法を遵守すべきであり、また、紛争は、国際法に基づき、平和的に解決されなければなりません。

 先般のASEAN関連首脳会議においても、私からこのような我が国の基本的立場につき説明し、多くの国からも同様の発言がありました。会議終了後に発出された議長声明にも、このような立場が書き込まれました。

 今後とも、海洋をめぐる情勢について、関係諸国とも連携しつつ、適切に対処していきます。

 尖閣諸島の領海内での漁業操業に対する支援についてのお尋ねがありました。

 尖閣諸島の領海とその周辺水域においては、沖縄や九州などの漁業者が一本釣り等の漁業操業を行っているほか、外国漁船の操業状況などの調査活動も行っている実態にあります。

 安倍内閣においては、これらの漁業者が安心して漁業操業を行うことができるよう支援を行っており、今後とも、関係者の御意見を伺いながら、しっかりと対応してまいります。

 中国による領空侵犯及び領海侵入についてのお尋ねがありました。

 尖閣諸島周辺において、中国公船による領海侵入が執拗に繰り返され、また、中国の固定翼機による領空侵犯が行われるなど、我が国を取り巻く情勢は厳しさを増しています。

 安倍内閣としては、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意のもと、引き続き、冷静かつ毅然とした態度で、警戒警備等の対応に万全を期してまいります。

 無人機への対応についてお尋ねがありました。

 一般論として申し上げれば、無人機が我が国領空を侵犯する場合には、有人機に対する場合と同様、自衛隊法第八十四条に基づき、自衛隊による対領空侵犯措置を実施することになります。

 具体的な対応については、政府としてはさまざまな検討を行っておりますが、いずれにせよ、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの観点から、国際法及び自衛隊法に従い、厳正な対応をとってまいります。

 なお、去る九月九日、東シナ海の我が国防空識別圏を飛行する無人機に対し、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進させるなど必要な対応を行いましたが、領空侵犯は発生しておりません。

 横田飛行場の軍民共用化についてお尋ねがありました。

 国家的な、社会的な行事である東京オリンピックのために、米国に対して横田飛行場の軍民共用化を提案すべきというのは、一つの傾聴すべき考え方だと思います。

 横田飛行場の軍民共用化については、東京都からの要望も踏まえ、日米間で提案や働きかけを行ってきましたが、本件については、日米双方に受け入れ可能な姿を模索する必要があり、今後とも、東京都の考えも伺いながら、調整に努めてまいります。

 以上であります。(拍手)


会議録全文