桜内文城先生衆議院予算委員会質問(平成26年7月14日)


桜内委員 次世代の党の桜内文城です。

 きょうから会派が分かれまして、次世代の党として質疑をさせていただきます。

 今ほど山田委員からもお話がありましたとおり、我が党は、日本維新の会の当時、四月十六日に集団的自衛権に関する見解を取りまとめて、その結論及び内容そしてそこに至るロジックはほぼ政府の七月一日の閣議決定と共通するものであったという意味で、このたびの集団的自衛権に関する大変重要な議論について、我々も一定の貢献ができたのではないかなというふうに若干自負しておるところでございます。

 その意味で、我が党としては、今回の政府の閣議決定について高く評価したいと思いますし、そして、足らざるをこの国会の審議等を通じて我々も指摘して、よりよいものにしていきたいというふうに考えておるところでございます。

 まず最初にお尋ねしたいと申しますか、なぜこれだけ、今、集団的自衛権の行使の是非について国会で大変大きな議論になっているのかというその原因について考えてみますと、先ほども法制局の長官からもお話ありましたとおり、我が日本国憲法の中には、自衛権あるいは自衛のための軍隊に関する規定が全く置かれていないということにあるかと思います。

 ですから、憲法の解釈によって、自衛隊の設置の是非、あるいは、自衛隊が今、合憲と認められているとして、その自衛権の範囲といいますか、個別的自衛権の行使は可能であって、一方で、集団的自衛権についてはこれまでは行使が認められてこなかった。これは解釈で決するほかないんですね。

 ですので、我々、先ほど山田委員からも、次世代の党というのは、我々の子供や孫の世代、あるいは、まだ生まれぬ将来世代の視点に立って、今本当に真っ先に取り組まなくてはいけないことに取り組んでいこうということで、今の憲法のあり方、国民の生命財産を守っていく上で、自衛権なり自衛隊に関する規定が置かれていないというのは大変大きな欠陥ではないかとも考えております。

 したがいまして、我が党は、国民の手で新しい憲法をつくっていく、自主憲法の制定も一つの党是として掲げておるところでございます。

 一つ総理にお伺いしたいのが、この議論の中で、集団的自衛権の行使に反対する方々からは、解釈改憲だですとか、あるいは、解釈によって憲法を改正するのはけしからぬ、これは立憲主義に反するという、いわばレッテル張りのようなことも言われておるんですけれども、先ほど申しましたように、今回の集団的自衛権に関する行使を認めるか否かというのは、とにかく憲法のどこにも自衛権なり書いていないわけですから、解釈によって決するほかないんですね。

 そういった意味で、私は、今回は解釈改憲ではなくて、憲法解釈の、先ほど総理が御答弁されました一部変更であって、そういった解釈改憲あるいは立憲主義違反というのは当たらないというふうに考えております。

 その点について、総理の御見解をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 まさに日本国憲法には、実力組織である自衛隊についての条文が、記述がないわけでありまして、同時に、自衛権についても書いていない。ですから、まさに解釈によって我々は我が国の防衛政策を形づくってきたと言ってもいいと思います。

 六十年前の昭和二十九年に自衛隊が設立をされました。この自衛隊、十万人を超える実力組織についても、これは海外では多くの国々は憲法に書き込まれているわけでありますが、書き込まれていないものをかつては吉田総理は、自衛のための武力行使もこれは禁じられているととれる答弁を憲法ができたときにされたわけでございます。しかし、その後、解釈で、まさに六十年前に自衛隊が誕生し、今日に至ったわけでございます。

 ですから、当然、安全保障政策は解釈によって積み重ねられてきたわけであります。多くは国会答弁で行われたわけでありますが、今回は閣議決定を経たところでございます。

 立憲主義とは、主権者たる国民が、その意思に基づいて、憲法において国家権力の行使のあり方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本的な考え方であります。今回の閣議決定は、憲法の規範性を何ら変更するものではございません。これまでの政府見解の基本的な論理の枠内における合理的な当てはめの結果でありまして、したがって、委員御指摘のとおり、今回の閣議決定は何ら立憲主義に反するものではないということは申し上げておきたいと思います。

桜内委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 私どもは、今回の集団的自衛権に関する閣議決定、先ほども申しましたように、高く評価しております。

 少し内容に踏み込んでまいります。

 三要件、新三要件と呼ばれておりますが、そのうちの一つに、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、これも昭和四十七年の政府見解に基づいて、相当与党内での協議も御苦労されてきたともお伺いしておりますけれども、これは、今後法律に落とし込んでいくというのを考えたときに、例えば、根底から覆されるという表現ですとか、やや文学的と申しますか、言いたいことはわかるんですけれども、少し御苦労をされ過ぎたのかなというふうに感じております。

 きょう何度も話が出ておりますが、例えば、その昭和四十七年の政府見解の中では、いわゆる集団的自衛権、恐らくこれは、きょうの議論を聞いておりますと、国際法上の集団的自衛権、他国を防衛する権利のことを言っておるんだと思いますけれども、そのうちの一部を、この新三要件に合致するものについては行使していくというふうに理解したわけですが、これで解釈はよろしいですか、法制局長官。

横畠政府参考人 基本的に、御指摘のとおりだと思います。

桜内委員 ありがとうございます。

 ここは割に大事なところだと思っておりまして、といいますのが、今回の閣議決定の中では触れられていないんですけれども、五月に出された安保法制懇の報告書の中で、こういった一節があります。「個別的自衛権や警察権を我が国独自の考え方で「拡張」して説明することは、国際法違反のおそれがある。」とのくだりがあります。今回の閣議決定にはこの部分が含まれておりません。

 ただ、今ほど法制局の長官から御答弁ありましたように、国際法上のいわゆる集団的自衛権について、正面から、集団的自衛権としてその新三要件に合致するものは認めていくという理解でよろしいとのことでした。ですので、今言った部分について、新三要件に合致する部分を個別的自衛権の拡張だなんていうことは、僕はこれはよくないと思うんですけれども、ここの点についても、法制局長官、よろしくお願いします。

横畠政府参考人 個別的自衛権と集団的自衛権の区別は、いずれも国際法上の概念でございますが、メルクマールとしては、自国に対する武力攻撃が発生した場合の対応を個別的自衛権と呼び、自国と密接な関係がある他国に対する武力攻撃が発生した場合の対応を集団的自衛権というふうに整理をしております。

 その前提のもと、今般の閣議決定は、国際法上、集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについてその行使を認めるものではなく、新三要件のもと、あくまでも我が国の存立を全うし、自国を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものでございます。

 このような我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置としての武力の行使は、閣議決定にございますとおり、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合があるということでございます。

桜内委員 明快な御答弁ありがとうございます。

 そこで、総理に一つ提案がございます。

 といいますのは、我が党は、四月十六日に、集団的自衛権に関する見解を取りまとめました。もちろん、政府として、閣議決定でまずお決めになって、それから自衛隊法ですとか個別法の改正に取りかかっていく、この手順自体はそのとおりだろうと思うんですけれども、しかし、きょうも午前中から議論を聞いておりますと、やはり国民の間でなかなか理解が進んでいないという指摘が多々なされております。

 その意味で、私どもは、国家安全保障基本法案なるものを今準備中でございまして、例えば、今の自衛隊法でももちろんいいんですけれども、自衛隊設置法となぜなっていないかというと、自衛隊の組織法といわゆる作用法とが今一緒になった法律が自衛隊法でありまして、その作用法に関する部分については、やはり憲法の附属法規として、例えば、憲法の五章でありますと内閣法というのが別途法律で落とし込まれております。また、第七章であれば財政法というのがあったりしますし、第八章であれば地方自治法というのがあります。

 その意味で、憲法第二章に附属する基本法として、国家安全保障基本法案なるものを国会に提出した上で、国民の代表者の集まるこの国会で、しっかりと国民が見守る中で、この集団的自衛権の行使の要件についても議論をすべきじゃないかと考えますけれども、この点について、総理はどのようにお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 今回の閣議決定を受けて、これから法整備を進めなければいけないわけでありますが、基本方針にのっとって、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法案について、政府として十分な検討を行い、準備ができ次第、国会に法案を提出し、御審議をいただくことになるわけであります。

 お尋ねの安全保障基本法についてでございますが、御党で今そうした基本法を考えておられるということでございますし、我が党でも野党時代に基本法をつくっていたわけでございますが、切れ目のない、守り抜くための対応を可能とする法案について、その要否等についてしかるべく検討をされることになる、このように考えております。

桜内委員 ありがとうございます。

 少し新三要件に関して、防衛大臣に一点、ちょっと細かいんですが、お尋ねしたいところがあります。

 今の自衛隊法七十六条が、恐らく、この集団的自衛権の行使の際にも、防衛出動に関する規定ですので、その整備といいますか、改正なりがなされていかなくちゃいけないと思うんですけれども、今の条文ですと、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険といった文言があります。これは個別的自衛権に関する防衛出動の要件ということになっておりますけれども、この「明白な危険」というのは、今回も、閣議決定の中でも、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」という、同じ「明白な危険」という文言が使われております。

 この「明白な危険」というものの解釈ですけれども、例えば、個別的自衛権の事例ではありますが、昨年の、中国軍の船からのレーダー照射というものがありました。レーダー照射というのはいわゆるロックオンということでもありまして、明白かつ現在の危険に該当するとも思われます。

 国際法上は、国連憲章の武力の行使には当たらないまでも、武力による威嚇に当たるとされるそうですけれども、防衛出動の要件として、そこまで、ロックオンまでされたときにどう対応するかというのは、これはなかなか現場でも難しいと思うんですけれども、この辺、ちょっとざっくりした質問で恐縮なんですけれども、防衛大臣として、今後、自衛隊法七十六条、その「明白な危険」というものについてどのようにお考えになるのか、お聞かせください。

小野寺国務大臣 この中継を見て、さまざま、周辺国もみんな、どういう答弁をするんだろうと思って聞いていると思いますが、基本的には、個別の事案に私どもとしてお答えするのは難しいことだと思っております。ただ、我が国として、これは、最終的には、閣議をし、国会での御承認ということになりますので、それなりのやはり問題だというふうに承知をしております。

 ただ、一つ、今、昨年のレーダー照射の事案がございましたので、そこをちょっとお話ししますと、確かに火器管制用のレーダー照射はございました。ただ、それと同時に、砲の指向、いわゆる大砲がそちらを向くとかというところまで来ておりませんので、前回の事案についてはそのようなところまではいかないということは、きょうお答えはできると思っております。

桜内委員 ありがとうございます。

 とはいえ、想定外をなくしていくことが恐らく防衛大臣の責務でもあろうと思いますので、しっかりと対応をお願いしたいと思っております。

 時間も余りありませんので、最後に一点だけお尋ねをいたします。いわゆる武力行使との一体化論についてお尋ねをしたいと思っております。

 五月に出ました安保法制懇の中では、この武力行使との一体化論について大変否定的な書きぶりをされております。

 実定法上の根拠もなく、最高裁判所の司法判断もないということで、その中で、これまでは、戦闘地域と非戦闘地域の区分がどうだったのか、非現実的だったんじゃないかとか、そういう反省もあったかと思います。「いわゆる「武力の行使との一体化」論はその役割を終えたものであり、このような考えはもはやとらず、政策的妥当性の問題として位置付けるべきである。」と、結構強目に否定的なニュアンスが出ておるわけです。

 一方で、今回の七月一日の閣議決定を見ますと、「「武力の行使との一体化」論それ自体は前提とした上で、」云々ということで、文言を非戦闘地域といった地域に区切るわけではなくて、この文言で言いますと、現に戦闘行為を行っている現場以外ならいいというふうな書きぶりとなっております。

 ここのところ、私自身は、一体化論はとるべきでないという意見を持っております。

 第一次大戦以降の世の戦争のあり方というのを見てみますと、日本軍が負けたのは、やはり兵たんといいますか、ロジスティクスがうまくいかなかったということが指摘されておる中で、正面の、まさに戦闘の現場、戦場ももちろん大変なものなんですけれども、やはりロジスティクスといいますか、後方支援というものもそれに劣らず重要だという観点からすると、この一体化論自体を維持するというふうに明確に述べられた点は少し首をかしげざるを得ないんですけれども、その点、総理、どのようにお考えになりますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この一体化論については、安保法制懇においては、一体化論はもうとるべきではないという趣旨の御議論がございました。確かに、国際的に一体化論をとっている国はないわけでありますが、憲法との関係において、我々は、一体化しないということは、この論理は残すべき、こう判断したわけでございます。

 しかし、今までのような非戦闘地域という概念は、現に戦闘が行われておらず、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域でありまして、これは、この一体化しないということを担保する上において相当広くとっているわけでございますが、今まで既に自衛隊はPKO等でいろいろな経験を積んでいるわけでありまして、その積んだ経験の中において、ここまで広くとらなくても、これは一体化はしないという中において、現場という考え方、それは戦闘現場ではない場所ということで、この非戦闘地域とどこが違うかといえば、現に戦闘行為が行われていない地域または場所であるという点においては共通はしておりますが、非戦闘地域は、それに加えて、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ということになっているわけでございます。

 これについては、果たしてそんなことが予見できるのかという議論も随分ございました。ミサイルも飛んでくる時代にそれが果たして可能かということもあったわけでございますが、我々は、実際に安全保障政策としての観点からも議論を詰めていった結果、一体化論は残し、憲法との論理的ないわば整合性はしっかりと確保しつつ、しかし、実際に要求があるのは、実際に戦闘している現場にいろいろな、補給をしろというニーズは事実上ほとんどないわけでありまして、つまり、戦闘行為に同じオペレーションをしない部隊が行っても、かえってこれはうまくいかないということに、足手まといになってしまうわけでありますから、後方地域と言われる地域、いわば戦闘現場ではない地域に補給していくということになるわけであります。

 そういう意味におきまして、今回も、実際にそうした後方支援ということは十分に可能性としてはあるのではないか、このように考えているところでございます。

桜内委員 ありがとうございました。終わります。


会議録全文