平沼赳夫先生衆議院本会議代表質問(平成25年1月30日)


平沼赳夫君 まず初めに、アルジェリアで不幸なテロによって生命を奪われた被害者の皆様の御冥福をお祈りし、御家族の皆様方に心よりお見舞いを申し上げます。

 私は、日本維新の会を代表して、安倍総理大臣の所信表明演説について質問をいたします。(拍手)

 日本維新の会は、このたびの総選挙において、五十四議席を獲得し、比例で頂戴した票の総数は一千二百二十六万票余でありました。全体の二〇%で、二番目の地位を占めたわけであります。私どもは、国会の第三党としてその責任を自覚し、日本のために、国政の場にあって、是は是、非は非の基本姿勢で今後の政治に責任を持って対処してまいる覚悟であります。

 本題に入る前に、我が岡山が生んだ、幕末、江戸後期の偉人、備中松山藩の山田方谷について触れてみたいと思います。

 彼は、今より二百年ほど前、一八〇五年に現在の岡山の高梁市で生まれました。家は貧しい農商で、菜種油の製造と油の販売を行っていました。幼くして両親を失った方谷は、陽明学を学び、苦学して家業に精を出しました。

 彼は、神童の誉れ高く、その学徳が藩主に認められ、わずか九歳の折、将来は何になりたいか、こう問われたとき、治国平天下と答えたと言います。大学にある修身斉家治国平天下、身を修めて家をととのえ、もって国を治むれば天下は平らかである、この言葉を九歳の少年が堂々と述べたというので、皆びっくりしたそうであります。

 彼は、京都や江戸へ出て学問にいそしみ、武士に取り立てられるまでに至りました。江戸では佐藤一斎の塾に入り、佐久間象山と二傑と称され、彼が塾頭になったわけであります。

 三十二歳で故郷の松山藩に戻った方谷は、藩校の有終館の学頭、教授となりました。方谷は、教育家として学識、経綸に一生懸命邁進し、四十歳で殿様の教育係にもなったわけであります。

 松山藩は、当時、大変な貧乏藩で、石高は五万石でしたが、方谷が調べたところ、実際は一万九千石ほどしかなかった、こういうふうに言われております。そして、借金は膨大で、十万両の借金が大阪の両替商にあり、利息を払うだけでも四苦八苦の状況でした。藩主板倉勝静に請われて、全権を委任されて元締役兼吟味役、今でいえば財務大臣に就任したわけであります。

 方谷は、現在の日本に匹敵する財政難に必死で立ち向かいました。方谷は、節約の大号令を発し、藩札の刷新、産業の振興、藩政改革、文武の奨励、軍政の確立、新田の開発等々、一生懸命それに取り組み、現在の貨幣価値でいうと六百億円にもなる十万両をわずか七年で完済し、その上に十万両の蓄えまで持つことができました。

 彼は、節約でお金を浮かし、大阪の両替商には正直に内情を示し、再建計画書を提出、利息をまけてもらい、この資金で製鉄のためのたたらをつくり、鉄製の三本股の備中ぐわを大量製造して、当時、日本の総人口の八割を占めている農民に向かって、江戸でこれを販売しました。これが羽の生えたように売れ、藩の収入に大変寄与しました。これで、方谷は、街道の整備、港の建設を行い、流通面でも配慮したわけであります。

 当時は、藩の発行した紙幣、藩札が紙くず同然になって、それぞれの家に眠っていました。方谷は、藩札を持ってくれば金貨、銀貨、銅貨にかえると交換を約束いたしました。藩中の人々は半信半疑で藩庁に藩札を持ってきました。約束どおりに金、銀、銅貨に交換してくれ、藩の中心にある河原に旧札がうずたかく積まれました。方谷は、衆人環視の中でこれに火をかけて燃やしまして、新たに藩札を発行しました。新しい藩札には信用があり、瞬く間に流通をし、隣の藩にまで浸透したようです。

 こうして、情報を開示し、資金を創出し、産業を興し、信用ある藩札の発行、金融改革、財政改革を行い、必要な公共事業にも手を伸ばしました。

 また、方谷は、新田の開発にも熱を入れ、新田からの米には年貢をかけませんでした。農民だけでなく、武士にも屯田兵制度で新田を開発させ、これも無税扱いにいたしました。これは税制改革の一つと言え、経済は盛んになりました。

 また、軍備にも着目し、里正隊、武士でない一般人から成る軍隊を創設し、総理の御地元の奇兵隊の十年も前にこの里正隊を設立しました。これを久坂玄瑞もわざわざ見学に来て、多大の影響を与えたものと言えます。

 山田方谷は、七十二歳で没するまで、教育に邁進し、彼の教育の教えを受けた人々が大変活躍をしました。彼の藩政刷新の効果絶大で、板倉勝静は徳川幕府の筆頭老中にまで上り詰めることができました。方谷は勝静の右腕として活躍し、大政奉還の精神も彼が起草したと言われております。

 現在の日本と同じような状態となっていた松山藩を実質一万九千石から二十万石の実力とまで言われるようにした山田方谷のこと、我々は、今、今後の参考に大いになると考えております。

 このことを念頭に置いて、以下、所信にはないことを含めて質問させていただきます。

 まず、皇統の問題です。

 平成十六年十二月、皇室典範に関する有識者会議が突如設置されました。国論を二分することになったわけであります。

 背景には、昭和四十年十一月三十日に礼宮文仁親王、現在の秋篠宮殿下御誕生以降、平成十六年まで四十年間、親王様の御誕生を見ない異常な事態がありました。この四十年間に八方の女子皇族が御誕生になっておられたのに、男子はゼロという状態でした。男女ほぼ五割と見られている確率から見れば、異常な事態が出現しておりました。今上陛下の次の次の世代において皇位を継承すべき男子のお世継ぎがおられないということで、これを一応憂えての有識者会議の設立でした。

 しかし、これをよく吟味してみると、皇室の危機を克服するどころか、この危機に乗じて、皇室の解体の企図につながる皇室典範の改正という手段で、これを間接的に行おうとする意図が明白なものとなりました。

 そして、平成十七年の一月に開始された有識者会議の結論は、女系天皇の出現を可能とするようなものになりました。当時の総理大臣は、よい答申をいただいた、次の通常国会で取り上げるとまで言い切ったのであります。

 しかし、平成十八年二月七日に秋篠宮家の紀子妃殿下御懐妊の兆候が発表され、二月九日には、皇室典範改正法案の国会提出は見送るということになりました。そして、同年の九月六日に悠仁親王の御誕生で、この作業は打ち切られることになったのです。

 しかし、皇室典範の改正をもくろんだ勢力は、決して諦めておりませんでした。平成二十三年十月に、女性宮家の創設という名分を立てて、行動が開始されました。

 私には思い起こすことがあります。有識者会議で国論が二分されたとき、平成十八年の春、武道館で国民大集会を開催いたしました。当時のマスコミの一部は、あんな大会場を満杯にするような人は集まらない、せいぜい半分だ、こうやゆいたしました。当日出席した私は、感激に浸りました。一階のアリーナ席から三階まで人々が参集、一万人を超える全国からの人々の大集会となったわけであります。

 各界より数々の意見が寄せられましたが、イスラエルのヘブライ大学の教授、ベン・アミ・シロニー氏のメッセージに皆感動いたしました。

 自分はユダヤ人であり、ユダヤ教のラビ、お坊さんは男親から男の子に引き継がれる。全世界に十億人を超えるカトリック教徒がおり、イスラエルも、そしてカトリック教徒も、男女同権思想が強いけれども、ローマ法王が男だということに誰も異論を差し挟まない。それは、長い歴史、伝統、文化のなせるわざであり、誰もが当然のことと思っている。日本の皇室は、百二十五代男系で続いた、とうといものである。世界唯一の存在ではないか。何で日本人はそのとうといものを変えようとするのか。日本人しっかりせいというものでした。

 私は、総理にお尋ねします。

 皇室典範の改正により、男系の継承は可能だと思います。本来であれば、皇室の家法である皇室典範のことを我々国民が云々すべきではありませんが、昭和二十二年の連合国の強権によって、十一宮家が断絶、皇室典範は憲法のもとに置かれてしまい、国民の代表たる我々が意見を述べなければならなくなりました。

 皇統の存続について、総理大臣の見解をお聞きしたいと思います。

 次に、日本国憲法の問題です。

 総理も改憲論を展開されており、私どもも、現在の憲法は改めないといけない、こう思っております。

 我が党の石原慎太郎代表は、廃憲論を述べております。それは、現憲法を改正するのではなくて、憲法を新しく制定すべきとの意見です。被占領国に対し、占領した国が憲法の変更を迫ることは、ハーグ陸戦条約の四十三条、大西洋憲章の第三条等に逸脱することになるからであり、違法な手段、不法な条件で意図的に改正された日本国憲法は問題との見解です。

 現在、九十六条改正が憲法改正のかなめのように言われておりますが、総理として、憲法を改めるにはどうしたらよいか、このことをぜひお聞かせいただきたいと存じます。

 次に、経済政策の問題です。

 総理は、三本の矢の政策を掲げ、無期限の金融緩和に踏み込み、二%のインフレターゲットを日銀と歩調を合わせて断行しました。それにつれ、十円以上の円安、株価の上昇、国民の景気マインドの向上と、効果はあらわれつつあり、そのことは私どもも評価いたします。

 しかし、米国国家情報会議のメガトレンド二〇三〇を見ると、覇権的なパワーの分散、人口の動態、食料、水、エネルギーの需給の大問題、危機が起きやすいグローバル経済、米国の役割の低下、格差の増大、米国のエネルギー自給と中東諸国との関係、気候変動、ユーロの崩壊の危機、中国の経済動向、米国の後退等々、大問題が山積しています。

 自由に世界経済をコントロールする覇権国家が存在したのは、歴史上、二度しかありません。ナポレオン戦争の終了から第一次世界大戦までの英国、第二次世界大戦後のアメリカの存在だけです。

 要するに、覇権国家がなくなるということであり、G7、G20と言っていましたが、Gゼロの時代が到来しております。もちろん、アメリカと日本は仲よくしていかなければなりませんが、Gゼロを想定される場合、日本の将来に対してどういう手段が経済政策に必要か、この肝心なことを総理にお聞きしたいと思います。

 最近では、デフレ、インフレの議論の上にスクリューフレーションの危機があり、さらなる中産階級の貧困化を招くと言われております。

 こういった現状にあって、我が国の産業を支える多くの中小企業にきめ細かく対応しつつ、競争原理を導入し、力強い産業を振興して、新たな市場を生み出していく決断が必要です。

 前述の山田方谷の話ではありませんが、ぜひ総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 次に、外交、安全保障について質問させていただきます。

 北方四島、竹島、そして尖閣諸島をめぐって緊張が高まっています。ロシアとの関係、韓国とのあつれき、中国の覇権主義、どれ一つとっても、我が国にとって喫緊の課題です。

 アルジェリアのテロを見ても、我が国の情報収集力の不足が現実であります。予算の貧しさも嘆きます。我が国の現状を見ると、諸外国では軍事費が増大しておりますが、ただ一つ日本は、小泉内閣以来、実質的に削減をしており、この国の安全と平和を守る上で限界に近づいております。

 国の財政状況を見ると、その厳しさはわかりますが、防衛費を思い切って上げる覚悟が必要です。福祉が叫ばれておりますが、国の平和と安全を担保することは、福祉と同じぐらい、国民の心の安寧を保つためにも必要であります。

 防衛費の確保はお考えのようですが、思い切って防衛費を大幅に上げる決断をしていただきたいと存じます。

 領土問題に関しても、我が国は、正々堂々と国際司法裁判所へ提訴するなど、正しい行動をとるべきだと考えます。

 防衛費増額と領土問題について、総理のお考えを伺いたいと存じます。

 小泉内閣のときに、北朝鮮は初めて拉致を認めて、五名の被害者が帰国し、引き続き家族の方々も帰ってまいりました。そして、昨年で十年もたっております。この間、何の進展もありませんでした。御家族の方々も年をとられ、全国で一千万人になんなんとする署名も集まっており、拉致された方々は必ず生きておられると確信しております。

 総理も拉致の問題でこれまで目覚ましい活躍をされてこられましたが、拉致問題解決のため、総理は、日本政府としてどう対応していくか、六者協議のこともよく考えて、ぜひそのお考えを承りたいと思っております。

 鳩山内閣のときに日米関係にひびが入り、普天間基地問題で米国との関係にきしみが出、沖縄の方々にも不信を与えております。

 日米関係の円滑化のため、総理はどう対処されようとしているか、これも総理のお考えをお聞きいたします。

 先ほども触れましたが、防衛力の整備は我が国にとっても大変重要な課題です。日本独自の防衛力整備に関し、向こう十年は我が国の優位が保たれている今、集団的自衛権の行使を含む集団的安全保障、核攻撃に対するシミュレーションの必要性や我が国の防衛体制のあり方について、御意見をお聞きしたいと考えております。

 最近、TPPについて国論がかまびすしくなっております。最大の同盟国アメリカの提唱ですから、話し合いには参加すべきと考えますが、農業問題を含め、二十四項目全て国益に関する重要な検討項目があります。私どもは、この交渉も、是は是、非は非で、国益を十分考慮して臨むべきと思っております。

 TPP交渉につき、総理のお考えをお尋ねいたします。

 次に、財政制度改革につき、現在の単式簿記、現金主義から、世界標準の複式簿記、発生主義への転換が必要と考えます。東京都や大阪府では既に採用して、大変な効果が上がっています。

 この会計制度の改革につき、御意見をお聞きしたいと存じます。

 私どもは、国の一般会計、特別会計等を連結し、予算ベースで財務諸表を作成、国の財務のコントロールを徹底すべきと思っております。

 なお、昨年十一月十六日、民主、自民、公明三党は、衆議院議員の定数削減について、選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い、次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行うとする衆議院議員定数削減に関する合意書を取り交わしましたが、今回の総理の所信表明演説では、国会議員みずからが身を切る定数削減等については何ら言及されていません。行政の歳出削減を断行する前には、まず政治家が身を切る覚悟を示すべきです。

 日本維新の会は、議員定数三割から五割削減を公約としてその実現を図りますが、この問題に対する総理の所信を伺います。

 政府と日銀の責任分担を明確化する協定が必要と考えます。政府が日銀に物価目標を指示する場合、その目標を達成するため、日銀は、非伝統的な金融政策に踏み込まざるを得なくなります。その政策実施の責任は政府が負うことを明確化すべきであります。

 政府と日銀の責任分担、日銀のガバナンスのあり方を再定義するための日銀法の改正が必要です。総理の見解をお聞きします。

 次に、社会保障についてお尋ねいたします。

 年金問題は大きな問題です。現役世代、若者世代を応援するために、世代間格差を是正することが必要です。具体的には、年金制度の考え方として、賦課方式から積立方式への移行、世代間格差の是正が必要です。

 年金問題について、今後どうあるべきか、総理のお考えをお聞きいたしたいと存じます。

 医療について、問題が多々あります。自己負担割合の一律化、世代間格差の是正、混合診療の解禁等々、問題が山積しております。今後の医療をどう守っていくかについてお聞きいたします。

 生活保護のことを考える人々を対象とすべきなのに、実施の内訳を見ると、その給付が外国人に多くなりつつあり、全体の三兆円の相当な部分を占めるようになっています。真の弱者を支援するという立場に立って、私どもはこのあり方を見直さなければならぬと思っております。

 この現状について、総理のお考えをお聞きします。

 次に、震災の復興です。

 きずなといいながら、各地は瓦れきの処理に非協力的になっています。東北四県を除くと、東京都や大阪市などが率先して受け入れを決断し、現在十一県が受け入れていますが、まだまだ不十分です。残念ながら、瓦れき処理は遅々として進んでおりません。もちろん安全性はしっかり担保しなければなりませんが、各地はもっと協力をすべきです。

 千六百二十八万トンのうち、いまだに五〇%以上が未処理であります。被災された方々は、強制移住をされて毎日不便な生活を強いられております。一日も早い完全な復帰が求められており、政府は全力を挙げてこの問題に取り組んでいくべきです。

 復興に関する御意見をお聞きしたく存じます。

 山田方谷は、今の日本の現状と類似した備中松山藩の大改革を、単なる経済復興だけではなく、金融、財政、必要な公共事業、流通、教育体制、軍備改革と、総合的になし遂げました。

 私どもは総理の姿勢に共感を覚えるものでありますが、ぜひ、三本の矢を、総合的な抜本改革によって日本再生のため頑張っていただくことを祈念し、私の代表質問を終わります。(拍手)


内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま平沼赳夫議員から、格調高い、そして示唆に富んだ御質問をいただきました。お答えをさせていただきます。

 皇統の存続についてのお尋ねがございました。

 安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本にかかわる極めて重要な問題であります。

 野田前内閣が検討を進めていたいわゆる女性宮家の問題については、改めて慎重な対応が必要と考えます。

 男系継承が、古来、例外なく維持されてきたことの重みを踏まえつつ、今後、安定的な皇位継承の維持や将来の天皇陛下をどのようにお支えしていくかについて考えていく必要があると考えております。

 憲法改正についてのお尋ねがありました。

 現行憲法の成立過程については種々の議論がありますが、現行憲法は、最終的には帝国議会において議決され、既に六十有余年経過したものであり、有効なものと考えております。

 憲法の改正については、党派ごとに異なる意見があるため、まずは、多くの党派が主張しております憲法第九十六条の改正に取り組んでまいります。

 日本の将来のために必要な経済政策についてのお尋ねがありました。

 大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢で、経済再生を推し進めてまいります。

 このうち、成長戦略については、企業が活動しやすく、雇用と所得が拡大する国を目指した取り組みなどを盛り込んでいます。

 また、日本経済の足腰を強くし、地域経済と地域の雇用を支える中小企業、小規模事業者が躍動するよう、きめ細かな支援を講じてまいります。

 防衛費と領土問題についてのお尋ねがありました。

 防衛費については、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、国民の生命財産と領土、領海、領空を断固として守り抜くため、しっかりと確保してまいります。

 我が国が抱える領土問題については、竹島問題は、平和的な解決を図るため、粘り強い外交努力を行っていき、北方領土問題は、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するため、粘り強く交渉に取り組んでまいります。

 なお、尖閣諸島については、我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に、我が国はこれを有効に支配しております。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、そもそも存在しません。

 拉致問題の解決に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であります。国の責任において解決すべき喫緊の重要課題であります。

 我が国としては、国際社会とも連携し、北朝鮮に対する対話と圧力の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しに向けて、全力を尽くしてまいります。

 普天間飛行場の移設問題についてのお尋ねがありました。

 日米同盟は、日本外交の基軸であります。普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編については、現行の日米合意に従って進め、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減に全力で取り組んでまいります。

 普天間飛行場の固定化は、あってはなりません。政府としては、沖縄の声によく耳を傾け、信頼関係を構築しつつ、普天間飛行場の移設に取り組んでまいります。

 我が国の安全保障体制についてのお尋ねがありました。

 我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増していること等を踏まえ、現防衛大綱を見直し、我が国の防衛体制を強化してまいります。

 また、集団的自衛権等については、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書を踏まえつつ、新たな安全保障環境にふさわしい対応を改めて検討してまいります。

 TPPについてお尋ねがありました。

 自由貿易の推進は、我が国の対外通商政策の柱です。力強い経済成長を達成するためには、自由貿易体制を強化し、諸外国の活力を我が国の成長に取り込む必要があります。

 他方、我が党の公約で明記したとおり、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉には参加しません。

 TPPについては、政府としては、これまでの協議の内容、TPPに参加した場合に生じ得るさまざまな影響等も含め、しっかりと精査、分析した上で、国益にかなう最善の道を求めてまいります。

 国の会計制度改革についてお尋ねがありました。

 東京都や大阪府の取り組みと同様に、国においても、平成十五年度決算分より、毎年、複式簿記、発生主義といった企業会計の考え方及び手法を参考として、国の財務書類を作成、公表しているところであります。

 こうした企業会計と同様の手法で国の財政状況を把握し、また、わかりやすく開示することは、重要であると考えております。引き続き、その有効活用等に取り組んでまいります。

 衆議院の定数削減等についてお尋ねがありました。

 衆議院の定数削減などの選挙制度のあり方は、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であります。

 さきの三党合意においても、定数削減について、制度の抜本的な見直しの検討を行い、今般の国会終了までに結論を得て必要な法改正を行うこととしているところであります。各党各会派において十分御議論をいただき、改革を進めてまいります。

 日銀法改正についてお尋ねがありました。

 政府としては、まずは、今般取りまとめた共同声明に基づき、日本銀行がみずから設定した二%の物価安定目標について、責任を持ってできるだけ早期に実現することを期待しております。

 なお、日本銀行法の改正については、将来の選択肢として、引き続き視野に入れてまいります。

 年金制度のあり方についてのお尋ねがありました。

 御指摘の積立方式への切りかえについては、いわゆる二重の負担の問題が生じること、より市場変動リスクにさらされることとなることなど、さまざまな問題があると考えております。

 現在の年金制度については、平成十六年の改正により、中長期的に持続可能な仕組みとなっていると考えておりますが、経済情勢の変化に対応し、より世代間で公平な制度にする観点等から、さらに、残された課題について検討してまいります。

 今後の医療についてのお尋ねがありました。

 日本が世界に誇る国民皆保険制度を堅持するため、社会保障制度改革推進法に基づき、現在、社会保障制度改革国民会議において、世代間の負担の公平化を図る措置その他必要な改革について、真剣に御議論をいただいております。

 政府としては、国民会議の議論を踏まえ、持続可能な医療保険制度の構築に向けた検討を進めてまいります。

 外国人に対する生活保護についてのお尋ねがございました。

 生活保護法は、日本国民のみを対象としており、外国の人は対象とはなっておりませんが、永住者、定住者等の在留資格を有する外国人の方については、人道上の観点から、予算措置として生活保護を支給しています。

 しかしながら、日本人、外国人を問わず、不正受給には厳正に対処していくことが重要であり、こうした取り組みを通じて、広く国民の信頼に足る制度の確立に努めてまいります。

 瓦れきの処理についてお尋ねがありました。

 被災三県の復興を果たすため、瓦れきの処理をさらに加速化する必要があります。

 政府としては、広域処理の受け入れ地域の今年度内の確定、仮設焼却炉の施設整備や再生利用の推進を通じ、瓦れきの処理の加速化に全力で取り組んでまいります。

 以上でございます。(拍手)

会議録全文