平沼赳夫先生衆議院本会議代表質問(平成26年10月1日)


平沼赳夫君 初めに、夏の豪雨に伴う土砂災害及び御嶽山噴火でお亡くなりになられた方々に心よりお悔やみを申し上げるとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 私は、次世代の党を代表して、安倍総理の所信表明演説について質問をいたします。(拍手)

 次世代の党は、自立、新保守、次世代をキーワードに、日本の国のあり方を日本人自身の手で決定する自主憲法を制定することを通じて、日本の独立と繁栄を守るとともに、世界平和と人類社会の進歩に貢献することを目指し、八月一日に結党いたしました。

 言うまでもなく、保守とは、改革を否定するものではありません。むしろ、祖先より受け継いだ民族性、文化を守り伝えていくために、いわば国柄を守るためには、疲弊した制度を徹底的に改革していくことが求められます。

 しかし、安倍総理の進める少子化対策、女性政策が果たして我が国の国柄を守り抜いていくことにつながるか、大いに疑問を持っております。

 と申しますのも、総理は、女性が輝く社会を目指すと表明されていますが、それは、子育ては社会でやるから女性も外に出て働くべきといったような、いささか乱暴な主張に聞こえてしまうのです。

 確かに、能力と意思がありながら、働きたいのに働けない、働ける環境にない、その思いを抱いている女性に働ける環境を提供することは重要であります。

 しかし、その一方で、国立社会保障・人口問題研究所が二〇〇八年に実施した調査によれば、子供が三歳になるまでは家庭で子育てに専念したいと考える女性が八割を超えております。人生にはさまざまなステージがあり、そのステージごとに女性が望むライフスタイルも異なるのです。

 よって、共働きの女性も専業主婦の女性も、その時々においてさまざまな選択が可能となるような社会を目指さなければならないと思っておりますが、総理の御見解をお伺いします。

 次世代の党は、子育て支援、少子化対策として、三世代同居や近居への支援を強化すべきと考えています。祖父母から孫までがスープの冷めない距離に住むことにより、家庭の大切さを感じながら育つことは、子供たちへの高い教育的効果が図られるものと考えます。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、両親と同居または近くに住んでいる女性の方が出産後も働き続ける割合が高いという結果が報告されています。つまり、子供を産み育てやすい環境とは、両親が同居または近くに住んでいる状態であることが読み取れます。

 このような子育て世代のニーズを踏まえ、三世代同居住宅建設または近居への支援や世帯単位課税等、大家族に有利な税制の導入など、家族でともに支え合い、助け合いながら生きていこうとする人たちに対しては国はもっと支援すべきだと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 関連して、非正規雇用問題について御質問いたします。

 正社員になりたいがなれない不本意非正規雇用者は、二十五歳から三十四歳の若い世代に多く、非正規雇用者の賃金は、正社員に比べて四割近くも低い現状が指摘されています。同一の労働には同一の賃金が支払われるべきです。また、正社員と比較した場合の非正規労働者の能力トレーニングの機会は不十分であり、その面でも格差があります。

 若者の能力を最大限に活用するための能力開発とキャリアパスをつくる仕組みが必要と考えますが、総理はどのようなお考えでしょうか。御質問いたします。

 農林水産業の発展は、地方経済に直結するテーマであるだけでなく、食の安全という国民の健康を左右する極めて重要な問題です。

 農林水産業に対する新規参入をさらに進めると同時に、食の安全を向上させる仕組みを整えるべきだと思いますが、農林水産業の活性化と食の安全確保についての総理の御見解をお伺いいたします。

 農林水産業以外の分野でも、医療やエネルギーなどで大胆な規制改革を進めていけば、必ず新しいビジネスが生まれてくると思います。

 しかし、現状では、規制改革が不十分であるため、自由な経済活動が制限されたままである一方で、円安に伴うガソリン、輸入資材の高騰が、とりわけ地方の中小企業にダメージを与えています。

 よって、円安に伴う緊急の中小企業対策と、さらなる規制改革を同時に進めるべきだと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 消費税増税について御質問いたします。

 厳しさを増す財政状況を考えれば、中長期的には消費税増税の必要があることは、私どもは認めます。しかし、四月から六月期のGDPの成長率は年率マイナス七・一%と大きく落ち込み、景気回復がおくれる現今の経済状況において、消費税率を上げる判断が正しいとは思えません。

 増税の前にやるべき改革があります。

 次世代の党は、公会計を、現金主義、単式簿記から、発生主義、複式簿記へと変える公会計改革を提案しています。具体的には、財政健全化責任法案や公的年金制度の世代間格差を是正する法案を推し進めています。

 来年秋にも予定されている消費税増税は慎重に検討し、まず、こうした私たちの提案を真摯に受けとめ、次世代のために、財政規律を強化し、大胆な行財政改革、社会保障の抜本改革を断行すべきではないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。

 そもそも、このたびの消費税増税は、税と社会保障の一体改革を断行し、歳出の穴を塞ぎ、持続可能な社会保障制度を実現していくためのものでございました。ところが、高齢者の医療費負担はわずか一割なのに対して、日本の将来を担う子供たちや国民健康保険加入の現役世代の負担は三割です。

 次世代や現役世代に大きな負担を強いている社会保障制度の改革の先送りは絶対に許されないと思いますが、税と社会保障の一体改革が遅々として進んでいない現状について、総理の御見解をお伺いいたします。

 去る七月十八日、最高裁判所は、永住外国人は生活保護法の適用対象ではないとの初めての判断を示しました。生活保護法は、対象を国民に限定しており、解釈で曖昧に運用してよい問題ではありません。

 現在、世帯主が日本国籍を有さない生活保護受給世帯に属する人員は七万四千名を超えます。金額は、厚生労働省は実態を把握しておらないようですが、受給人数から単純計算すると、恐らく一千二百億円は下らない額に上っているものと思われます。これは決して少ない額ではありません。

 最高裁判決を踏まえ、生活保護制度は国民に限定すべきと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 さて、六月に改正された日本再興戦略には、外国人材の活用として、技能実習制度の拡充や、建設及び造船分野での外国人材の活用、国家戦略特区における家事支援人材の受け入れなどがうたわれています。新しい在留資格の創設は移民政策につながるのではないかと疑問を持つ国民も少なくありません。

 我が次世代の党は、文化的、社会的影響を顧みない移民の大量受け入れには慎重であるべきと考えています。

 そもそも政府は、外国人への生活保護の全体像すら正確に把握できておらず、日本在住の外国人に対する対策は不十分です。

 そこで、まず、外国人労働者に関する実態、特に外国人労働者が地域社会に与える影響などを徹底的に調査し、その結果を国民に公表すべきと考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。

 エネルギー政策について質問いたします。

 所信表明演説では、規制緩和による水素の活用に言及がありました。

 次世代の党の結党大会では、海上メガフロートに一万基の風力発電機を設置し、そのエネルギーで海水から水素をつくることによって、全国で消費されるガソリンの全てを水素に置きかえるということを提案いたしました。

 水素ステーションの活用とあわせて、再生可能エネルギーを利用した水素の製造とガスライン構築によって、エネルギー自給率一〇〇%の国を目指すべきと考えますが、総理はどうお考えでしょうか。

 関連して、今年の上半期の経常収支は赤字となりました。原発再稼働のおくれによる燃料輸入費用の増大が大きな原因であります。

 原発の再稼働は必要であると考えますが、原子炉が冷却できなくなれば危機的事態になることが知られるようになった今日、テロリストに狙われる危険もあり、原発再稼働の条件として自衛隊による原発の警備を加えることを検討すべきと考えておりますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 教育について質問いたします。

 平成十八年十二月、第一次安倍内閣のもとで教育基本法が改正されました。しかし、教育現場には、歴史と伝統を尊重し、公共の精神を重んずる日本国民の育成という改正教育基本法の目的が浸透しているとは思えません。

 今、日本に必要な教育は、世界で活躍できる立派な日本人を育てる教育であります。そのためにも、日本という国家を担う自覚と、バランスのとれた視野の広い歴史観を持つ日本人を育てる教育とするため、高校での日本史の必修化と小中学校での道徳の教科化を急ぐべきだと思いますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

 慰安婦問題について御質問いたします。

 慰安婦強制連行説のもととなった吉田清治氏の話は全く根拠のない虚偽であったことは、朝日新聞が認めました。また、政府の調査によると、強制性を客観的に裏づける証拠がないまま河野談話が公表されたことが、二月二十日の石原信雄元官房副長官の参考人発言により明らかとなりました。

 ところが、河野談話はいまだに政府の正式見解として扱われ、慰安婦イコール性奴隷説は是正されず、在外邦人は、今もいわれなき非難にさらされています。河野談話は、歴史的真実に基づき、直ちに否定されなければなりません。

 総理に質問します。

 河野談話にかわる新たな官房長官談話を発表しないのでしょうか。また、現在使われている学校教科書の慰安婦記述の見直しはどうなっているのか、お答えをいただきたいと思います。

 来年は、終戦七十年です。ところが、いまだに、南の島々にさきの大戦で散華された多くの御遺骨が帰還されていません。

 アメリカには、全ての兵士を故郷に帰すを合い言葉に、海外の兵士の御遺骨の帰還と鑑定を行う専門の組織として、米軍統合戦時捕虜行方不明者調査司令部、通称JPACがあります。

 次世代の党は、九月十一日、ハワイの本部を訪問し、JPAC司令官のマッキーグ空軍少将と意見交換を行ったところ、日米合同で遺骨帰還事業を行うことが重要であるとの認識で一致しました。

 硫黄島もそうですが、さきの大戦で日米両国の将兵が激戦を繰り広げたこともあって、御遺骨が同じ場所に眠っていることが多く、日米合同で事業を実施した方が効果的だというのが理由の第一であります。

 第二に、遺骨収集のためには、アジア太平洋のどこで戦闘が行われたのか、日米両国の持つ戦闘記録を共有していくことが必要であるからであります。

 そこで、終戦七十年の記念事業として、日米合同で御遺骨の帰還事業に取り組むべきだと思いますが、総理の御意見をお願いいたしたいと思います。

 拉致問題についてお伺いいたします。

 北朝鮮は、拉致された疑いのある方を含む全ての日本人拉致被害者に関して再調査を行い、夏の終わりから秋の初めにかけて初回報告を行うとしていましたが、調査は全体で一年程度を目標としており、現在はまだ初期段階にある、現時点で、この段階を超えた説明は行うことができないとの通報を行ってきました。

 前言を翻し、次回の報告時期も示さない不誠実な態度に、関係者は落胆させられました。

 特定失踪者を含めた拉致被害者全員の帰国が実現するまで日朝国交正常化なしとの方針で、粘り強く交渉を続けていくべきと考えます。拉致被害者の帰国なくして制裁解除なし。北朝鮮からの提案の、平壌にやってこいなんていうのは拒否すべきだと思います。

 この問題は、外務省だけでなく、拉致対策本部、拉致議連、家族、民間の方々の知恵を合わせて、オール・ジャパンで取り組むべき問題であると考えます。

 特定失踪者を含めた拉致被害者の全員帰国について、オール・ジャパンで取り組むことについてどうお考えか、安倍総理の言葉でお答えいただきたいと思います。

 さて、日本を取り巻く国際情勢は年々厳しくなる一方ですが、総理の所信表明演説には厳しい国際情勢についての言及がなく、安全保障を軽視しているかのような印象を、国民だけでなく、国際社会にも与えかねません。

 残念ながら、このたびの所信表明演説は、国家の宰相として持つべき危機意識の欠如した、緊張感を欠いた作文と言わざるを得ません。

 あえて申し上げますが、隣国の中国の軍事費は、公表分だけでも過去二十年間で二十倍となり、日本の数倍の軍事費を使って軍拡を進めています。その影響は極めて深刻です。

 特に、中国のミサイルは日本全土をターゲットにしているにもかかわらず、巡航ミサイルや弾道ミサイルを保有していない日本の防衛体制は、極めて脆弱です。

 九月にホノルルでアメリカの太平洋海兵隊司令部でも意見交換をしましたが、抑止力強化のためには、アメリカ海兵隊との合同訓練をふやすとともに、潜水艦を増強し、巡航ミサイルを配備するため、日本の防衛費を思い切って増額する必要があると認識しますが、総理はどのようにお考えでしょうか。

 防衛面での法整備についてお伺いします。

 法整備で大事なのは、今の自衛隊法などをネガリスト方式、つまり、できないことを列挙する方式に変えることであると認識します。

 ポジリストと呼ばれる現行の自衛隊法では、防衛出動、海上警備行動など事態ごとに対応措置が規定され、想定外の行動ができません。

 そこで、次世代の党は、現在、国家安全保障基本法案を準備し、ネガリスト方式への転換を目指そうと考えていますが、安倍総理の、防衛関連法のネガリストへの転換について賛成なのか反対なのか、原則論で結構ですから、御見解をお伺いいたしたいと思います。

 海洋の安全保障に関してお伺いいたします。

 次世代の党では、九月一日より六人の国会議員がフィリピンを訪問し、沿岸警備隊や下院国防・安保委員長などと活発な意見交換を行いました。

 フィリピン側は日本にアジアの安全保障でイニシアチブをとってほしいとの要望が強く、海洋における法の支配を推進するための協力に関する共同文書に双方が署名、調印いたしました。

 今後、東南アジア各国や米国だけでなく、中国も引き入れる形で、海洋安全保障を推進する国際議連をつくっていきたいと考えております。

 次世代の党は、九月八日からアメリカを訪問、米国上下両院議員らと活発に意見を交換してまいりました。集団的自衛権行使容認について高い評価を受けただけでなく、我が党がフィリピン側と設立したアジアにおける海洋安全保障のための議員連盟に対し、好意的な形で賛同をいただきました。

 こうした議員間の海洋安全保障メカニズム構築についてどのように認識されているか、総理の御見解をお聞かせください。

 長年自民党本部に掲げられた自主憲法制定推進本部の看板は、いつの間にか、憲法改正推進本部になっておりました。

 私自身、落選を二度経験しながらも、最初の選挙から、公約の第一に自主憲法制定を掲げてまいりました。以来三十八年、ようやく憲法改正のための国民投票も整備され、新たな憲法を制定できる機運が高まってまいりました。

 ところが、今回の所信表明演説には、憲法改正という文字はありませんでした。まことに残念でなりません。

 次世代の党は、安倍総理にかわって、国会の同志に申し上げます。

 日本人の手による日本人のための憲法を制定することに是か非かという大局の視点に立ち、何としてでも衆参両院の三分の二の勢力を結集しようではありませんか。

 次世代に胸を張れる日本へ。

 次世代の党は、終戦百年に当たる二〇四五年の日本の姿を念頭に置きながら、自主憲法制定を初めとする根本的な改革に勇気を持って取り組むことをお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)


内閣総理大臣(安倍晋三君) 平沼赳夫議員にお答えをいたします。

 女性のライフステージに応じてさまざまな選択が可能となる社会の実現に関するお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、女性の置かれた状況は多様であり、それぞれの希望に応じ、女性が個性と能力を十分に発揮することができる社会をつくっていくことが必要であると考えます。家庭で子育てに専念したい方も、子育てと仕事の両立を望む女性も、その希望を実現できるよう、さまざまな支援措置を講じてまいります。

 三世代同居や近居に対する支援や、世帯単位課税等についてのお尋ねがありました。

 子育てをするに当たり、祖父母との近居や同居を理想とする方も相当数おられると認識しています。政府としては、三世代同居、近居への支援として、例えば、都市再生機構賃貸住宅における近居促進制度などを実施しており、引き続き、子育てに適した住宅、居住環境の確保に取り組んでまいります。

 また、御指摘の世帯単位課税については、女性の働き方に対して抑制的な効果がある等の指摘もなされております。

 今後、税制を検討するに当たっては、家族のあり方や働き方に関する国民の考え方を十分に踏まえる必要があると考えます。

 若者の職業能力開発等についてお尋ねがありました。

 非正規雇用については、正規雇用に比べて賃金が低い、能力開発の機会が少ないことなどが課題となっており、特に、将来を担う若者の可能性を最大限発揮できる環境を整備していくことは重要です。

 このため、正社員を希望する若者に対しては、正社員転換を支援するとともに、安定就労に向けた取り組みを進めてまいります。

 また、職業訓練を行う事業主への支援の拡充、キャリアコンサルティングの充実等、若者の職業能力開発を進める環境整備に取り組んでまいります。

 農林水産業の活性化と食の安全確保についてお尋ねがありました。

 農業を成長産業にしていくためには、担い手への農地集積による生産性の向上と、六次産業化等による付加価値の向上を着実に進めていくことが重要です。

 また、地域に多様な担い手を確保していくことが重要であり、新規就農者への支援のほか、リース方式による企業参入の促進を図っていくことが、地域農業の活性化の観点から重要と考えています。

 また、農林水産物、食品を供給するに当たり、その安全性を確保することは前提でありますが、高品質で安全な我が国の農林水産物、食品の特性を生かし、内外の需要を開拓してまいります。

 今後、こうした施策を着実に実行することによって、農林水産業、農山漁村全体の所得倍増の実現につなげていきたいと考えています。

 円安に伴う緊急の中小企業対策と、さらなる規制改革についてお尋ねがありました。

 エネルギーコスト増などにより、厳しい経営環境に置かれた中小・小規模事業者の方々に対しては、資金繰り支援や省エネ設備の導入補助に全力で取り組んでいます。

 さらに、円安に伴うコスト上昇分を転嫁できない場合を含め、下請代金支払遅延等防止法に違反した行為に対し、引き続き厳正な取り締まりを行ってまいります。

 規制改革については、民間のダイナミックなイノベーションの中から多様性あふれる新たなビジネスを生み出すことができるよう、岩盤のようにかたい規制に果敢に挑戦してまいります。

 消費税率の引き上げと公会計制度、財政健全化についてお尋ねがありました。

 消費税率の引き上げは、国の信認を維持するとともに、社会保障制度を次世代に引き渡し、また、子育て支援を充実させるためのものです。

 消費税率の一〇%への引き上げについては、経済状況等を総合的に勘案しながら、本年中に適切に判断してまいります。

 国の公会計制度に関しては、平成十五年度決算分より毎年、発生主義、複式簿記といった企業会計の考え方及び手法を参考として、国の財務書類を作成、公表しています。

 財政健全化は重要な課題です。経済再生と財政健全化の両立を図り、国、地方の基礎的財政収支に関する財政健全化目標の達成を目指します。

 このため、無駄や非効率は最大限排除しなければなりません。社会保障支出を含め、聖域を設けずに見直しを行い、予算の中身を大胆に重点化、効率化してまいります。

 社会保障と税の一体改革についてお尋ねがありました。

 社会保障と税の一体改革については、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すとの考え方のもと、取り組んでいるところであります。本年四月に消費税率を八%に引き上げ、その増収分は、全額、子育て支援を含めた社会保障の充実、安定化に充てております。

 社会保障制度改革については、受益と負担の均衡がとれた制度とするため、社会保障改革プログラム法に沿って改革を進めていきます。

 世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくため、引き続き、一体改革を着実に進めてまいります。

 外国人に対する生活保護についてお尋ねがありました。

 現在、外国人については生活保護法の適用はありません。

 一方、適法に日本に滞在し、永住者、定住者等の一定の在留資格を有する外国人については、生活保護法に準じて、必要と認める保護を行うこととしています。このような保護は、人道上の観点から行政措置として行われるものであり、今、これを見直すことは考えておりません。

 外国人労働者についてお尋ねがありました。

 日本再興戦略に盛り込まれている外国人材の活用は、移民政策ではありません。多様な経験、技術を持った海外からの人材に日本で能力を発揮していただくものであります。

 安倍政権は、いわゆる移民政策をとることは考えておりません。

 日本再興戦略の具体化等に当たっては、毎年公表している外国人労働者の雇用状況を初めとして、必要に応じて、外国人労働者を取り巻く状況を把握しながら、国民の皆様の御意見を伺いつつ、検討を進めてまいります。

 水素の活用によるエネルギー自給率向上についてのお尋ねがありました。

 水素は、エネルギー安全保障や二酸化炭素削減に大きく寄与し得る未来のエネルギーです。

 水素の本格的な活用を進めるため、昨年、さまざまな省庁にまたがる規制を一挙に改革しました。その結果、水素ステーションがいよいよ商業化され、世界に先駆けて燃料電池自動車が販売されようとしており、水素社会が現実に幕をあけようとしています。

 こうした足元の水素の利用拡大にあわせて、再生可能エネルギー等を用いて製造した水素を安定、安価に供給するシステムの確立を目指します。これにより、エネルギー自給率向上に最大限貢献すべく、技術開発を進めております。

 今後とも、水素社会の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 原発のテロ対策についてお尋ねがありました。

 テロ等の不測の事態から原子力発電所を守ることは、再稼働の有無にかかわらず、極めて重要な課題です。

 原子力発電所の警備は、公共の安全と秩序の維持に第一義的な責任を有する警察機関において行っているところでありますが、一般の警察力をもって対応できない場合には、自衛隊に治安出動等を発令して対応することとなります。

 政府としては、今後とも、自衛隊と警察機関の共同訓練を積極的に実施するなど、万全を期してまいります。

 高等学校における日本史の必修化と、小中学校での道徳の教科化についてお尋ねがありました。

 高等学校における日本史の必修化については、日本人としてのアイデンティティー、日本の歴史と文化に対する教養などを備え、グローバルに活躍できる人材を育成する観点から、今後検討を進めてまいります。

 また、小中学校における道徳教育については、道徳を特別の教科として位置づけ、道徳教育の目標、内容の見直しや教員養成の充実など、抜本的な改善充実を図ってまいります。

 河野談話及び教科書の記述についてのお尋ねがありました。

 河野官房長官談話については、既に官房長官も述べているとおり、安倍内閣で見直すことは現在考えておらず、河野官房長官談話に関して新たな談話を発表することも現在考えておりません。

 また、既に検定に合格した現行の教科書における慰安婦に関する記述の訂正を発行者に求めることまでは考えておりませんが、今後の申請図書については、先般改正した新しい検定基準に基づき、教科用図書検定調査審議会において適切に教科書検定が行われるべきものと考えます。

 御遺骨の帰還についてお尋ねがありました。

 来年、戦後七十周年を迎えますが、いまだ、祖国を思いながら異国の地に倒れられた多くの方々の御遺骨が祖国に帰国されていません。

 御遺骨の帰還については、一柱でも多くの御遺骨を早期に収容できるよう、米国を初め各国の政府機関等の協力を得ながら、国の責務として、政府一体となって取り組んでまいります。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 拉致問題の全面解決については、御指摘のとおり、政府だけではなく、御家族、また、平沼議員が会長を務めておられる拉致議連や、政府・与野党拉致問題対策機関連絡協議会を初めとする党派を超えた取り組みに加え、広く国民の理解と協力を得て、オール・ジャパンの力、知見を結集していくことが大切であると考えております。

 また、北朝鮮側も、日本の国民、そして日本の国の意思がどこにあるか、見ているわけであります。

 今こそ、我々は、オール・ジャパンで、拉致被害者を帰せ、しっかりと声を一つにして北朝鮮側に求めていく必要がある、このように考えております。

 拉致問題の全面解決は安倍内閣の最重要課題であり、全ての拉致被害者の御家族が御自身の手で肉親を抱き締める日が来るまで私たちの使命は終わらないとの決意で、この問題に全力をもって取り組んでまいります。

 抑止力強化のための海兵隊との合同訓練及び防衛費の増額についてのお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、我が国の平和と安全を確保するため、抑止力の強化は喫緊の課題であると認識しております。

 そのような観点から、我が国独自の抑止力とともに、日米同盟の抑止力を向上させるため、米海兵隊を初めとする米軍と自衛隊との共同訓練を積極的に推進してまいります。

 また、防衛関係費については、政権交代後、二年連続の増額としているところですが、今後とも、国民の生命財産と領土、領海、領空を断固として守り抜くため、しっかりと確保してまいります。

 引き続き、抑止力を強化するための施策を着実に実施することにより、我が国の防衛に万全を期してまいります。

 防衛法制のネガリスト方式への転換についてお尋ねがありました。

 今後の安全保障法制の整備については、先般の閣議決定で示された基本方針のもと、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法制について、政府として十分な検討を行い、与党とも調整の上、国会に提出し、御審議いただくことを考えております。

 具体的な法制のあり方や法整備の内容は現在検討中であり、御指摘のようなネガリスト方式については、その課題も含め、引き続き十分検討してまいります。

 議員間の海洋安全保障メカニズム構築についてのお尋ねがありました。

 海洋安全保障の確保は、アジア太平洋地域の喫緊の課題です。このため、私は、シャングリラ・ダイアログにおいて、海における法の支配の三原則を訴えたところであります。

 このような観点から、次世代の党の国会議員団がフィリピンや米国を訪問し、法の支配に基づく、自由で開かれた海を守り、育んでいくために活発に活動されていることは、まことに意義深いものであると敬意を表する次第であります。

 以上であります。(拍手)

会議録全文