和田政宗先生参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会質問(平成27年7月29日)


和田政宗君 次世代の党の和田政宗です。

 我が党は、我が国の平和を守るために必要な法整備を行うべきと考えており、衆議院では野党で唯一、法案に賛成をいたしました。しかしながら、我々は政府案にはまだ不十分なところがあると考えています。それは、武器使用権限が厳し過ぎるため、いざというときに本当に国民や自衛隊員を守れるのかという点や、グレーゾーン事態への対処についてです。私の本日の質問は、安保法制の整備の必要性とともに、不十分な点をいかに改善すべきかという観点から聞いていきます。

 まず、総理にお聞きします。

 次世代の党は、既に二月に国家安全保障基本法案や領域警備法案を官邸に届けています。これは、その後示された政府案でカバーできていない部分、例えば、自衛隊の国や平和を守る活動において国際標準に沿った武器使用権限を持たせる、これは使うかどうかは別で抑制的であるべきであると考えますが、権限をしっかり持たせておかないと不測の事態に対処できない、こうした点について対処できる内容になっておりますし、グレーゾーン事態についても、次世代の党の案は、つなぎ目なく事態に対応できる内容となっております。

 我が党は、より良き法案とするために政府・与党と是非協議をしたいと考えておりますが、総理のお考えはいかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 次世代の党からは、本年二月に国家安全保障基本法案及び領域警備法案について申入れをいただきました。一層厳しさを増す安全保障環境についての認識や現状について危機感を共有していただいていると思います。また、政府案に先立ち、法案の形で自らの政策や立場を明確に示された誠実な姿勢に敬意を表したいと、こう思う次第でございますし、国民の命を守り、そして幸せな平和な暮らしを守っていくためにその責任を果たそうという姿勢に対して評価したいと思います。

 安全保障に関わる法案は、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために極めて重要なものであり、より良い結果を出していく上において、国会の場などにおいてしっかりと議論をしていきたいと、このように思います。

和田政宗君 我が党は、審議拒否は絶対に行わず、徹底的に審議をして、我が国の抑止力を高め、平和を守る法整備につなげていきたいというふうに思いますので、総理のおっしゃるように、審議の中でそれでは議論をまず深めていきたいというふうに思っております。

 さて、今回の法整備に反対する人の中には、集団的自衛権の行使を容認すると戦争に巻き込まれる、すなわち戦争法案だというレッテル貼りを行っている人もいます。私は、絶対に戦争を起こしてはならないという反戦論者でありまして、だからこそ、国際情勢や日本の防衛力を客観的に分析をしてまいりましたけれども、子を持つ親として、今何もしないというのは全くあり得ません。我が国の抑止力を高め、我が子を守るためにも、必要な法整備を行っていかなくてはならないというのは明白です。(資料提示)

 個別的自衛権で対処する論のみならず、軽武装中立を主張する人もいますけれども、何もせず平和を守れる時代というのは終わりました。例えば、中国はウイグルで何をしているでしょうか。デモ隊に銃を乱射し、千人を超える人を虐殺しました。これは映像も多数残っています。そして、南シナ海では国連海洋法条約に違反し軍事拡張を続け、さらに我が国固有の領土尖閣も奪い取ろうとしています。こうした状況の中、何もせず放置をすれば、戦争に巻き込まれる危険性が高くなるということは明白です。このような状況で軽武装中立を主張する人は、いざというときにスイスのように国民皆で武器を取って戦うという覚悟があるのでしょうか。しかし、それでは多くの国民の血が流れてしまうわけです。

 そして、テロの抑止です。

 既に、日本はテロのターゲットに残念ながらなっています。世界は協調してテロと闘っているのに支援も何もしなければ、日本は何もしないのでやりやすいということで誘拐やテロの集中的なターゲットになるおそれがあります。だからこそ、今、手を打つ必要があります。

 個別的自衛権での対処を主張する人もいますが、もうそれでは日本は守れません。アメリカのオバマ大統領がもはやアメリカは世界の警察ではないと言い、米軍が中国のミサイルを警戒し前線での能力を後退させている中で、日本はその空白をしっかり埋め、近隣友好諸国と連携し共同で対処しなければ、平和は守れません。

 そこで、政府にお聞きをしますが、日本単独の個別的自衛権のみで全てに対処するとの考えを取り、日本がアメリカにも頼らず自国のみの防衛力で防衛をしようとする場合、防衛費は幾らになると見込まれるでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 自主防衛論について、一般論として申し上げれば、今日の国際社会において自国の意思と力のみで国の平和と独立を確保しようとすれば、核兵器の使用を含む様々な侵略事態、また軍事力による威嚇等のあらゆる事態に対応できる隙のない防衛体制を構築することが必要になります。

 我が国が独力でこのような体制を保持することについて検討しておらず、必要となる防衛費をお答えすることは困難ですけれども、一般論を申し上げれば、米国が有する装備品や運用基盤等を我が国自身が装備していくことになれば、所要の防衛費、関係費、これは大幅に増加するものとなると考えております。

和田政宗君 国民の理解を進めるためにも是非数字を挙げてほしかったですけれども、防衛大学の二人の教授の試算では、単独防衛の場合は防衛費は二十四兆円になるということです。これは現在の防衛費の五倍で、とても今担える金額ではありません。だからこそ、他国と連携して我が国の平和を守っていく必要があるわけです。

 そして次に、集団的自衛権の説明について聞きます。

 そもそも、自衛権は、個別的であろうと集団的であろうと、国際法上、国家の基本権、自然権として認められており、国連憲章五十一条に明記をされています。だからこそ、世界各国の憲法では自衛権が明記されている国は少数なわけです。これは、国家に自衛権があることは余りに当たり前のことで、わざわざ憲法に書く必要がないからです。日本国憲法にも書かれておりません。

 その自衛権のうち、集団的自衛権についても、政府は昭和二十五年の答弁から一貫して国家の基本権として認めてきているわけですけれども、昭和四十七年の政府見解では、集団的自衛権は持っているが行使できないと制限をしたわけです。つまり、キャップをかぶせたわけです。去年の政府解釈の変更は、その過度な制限を外したにすぎない、キャップを外したにすぎないわけで、むしろ集団的自衛権について適正化されたと考えるべきです。どう考えても合憲でありまして、憲法違反には当たりません。

 私は、政府はこうした説明も行っていくべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、和田委員から御指摘になられたように、四十七年の見解もそうでありますが、我が国は国際法上は集団的自衛権の権利を保有しております。これは世界各国が、国連憲章に書いてあるわけでありますからそうでありますし、安保条約の前文にもこれは書いてございますし、日ソの共同宣言の中にもこれは実は書かれているわけでございます。

 ここで持っている権利というのは、まさにこれはフルの集団的自衛権でございまして、国際社会が認識している国際法上における集団的自衛権の権利は、我が国はこれはもう従来より持っているという認識では一貫しておりますが、憲法上の要請によってそれは行使できないというのが四十七年の見解でありました。ですから、権利を有しているというところは同じでございます。

 しかし、その行使においては、全部行使できないのか、しかし、果たしてそれは必要な自衛の措置の中に入るものもあるのではないかということを我々は考え続けてきたところでございますが、その中におきまして、国家の存立が脅かされ、そして国民の生命や財産や幸福を追求する権利が根底から覆されるという三要件に当てはまる場合には、これは許されるという判断をしたわけでございまして、これはまさに憲法の範囲内であるということは言うまでもないと、このように思います。

和田政宗君 総理の御答弁でも分かるんですけれども、やはりより分かりやすくシンプルな説明というものを国民は求めているというふうに思いますので、また我が党もこの審議の中でしっかりとそういった点が深まるようにしていきたいというふうに思っております。

 次に、我が国の平和を守り、抑止力を高めるという観点から、政府に改善を求めなくてはならないという点を質問していきます。

 まず、武力行使の新三要件について聞きます。

 これは、我が国をしっかり守ることを考えた場合、旧三要件より後退しているのではないかという懸念があります。それは、新三要件では武力行使が認められる要件として武力攻撃があったこととなっておりますが、旧三要件では急迫不正の侵害があることであり、早い段階から攻撃の端緒を捉えて攻撃することが、反撃することが、行動することができたわけです。しかし、新三要件の武力攻撃があったことでは、明確な武力攻撃を受けてからでないと反撃できないのではないでしょうか。また、何をもって武力攻撃を受けたとするのか、お答えください。

国務大臣(中谷元君) 従来から、武力攻撃が発生した時点は武力攻撃が始まった時点、すなわち相手が武力攻撃に着手をした時点でありまして、武力攻撃による現実の被害を待たなければならないというものではないと解されており、これは旧三要件でも新三要件でも変わりません。いずれにせよ、我が国又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず個別的、集団的自衛権を行使することは、憲法上も国際法上も認められません。

 御指摘の急迫不正の侵害、これはそもそも刑法上の概念として、急迫不正の侵害に対処する正当防衛、これの要件として用いられる言葉でございます。昭和四十七年見解及び旧三要件においてもこの急迫不正の侵害という言葉が使われておりまして、ここで言う急迫不正の侵害という言葉は、一般的な正当防衛の要件である急迫不正の侵害と同様のことを意味する表現でございます。また、国際法上も個別的、集団的自衛権に基づく武力行使の要件となる武力攻撃の発生の中には、本来的に急迫不正の侵害があることが前提となっております。

 そこで、今回、新三要件を整備するに当たりまして、急迫不正の侵害という言葉よりも、国際法上確立しており、自衛隊法等でも用いられる武力攻撃の発生という言葉で整理をしたところでございまして、このように実質何ら変更があるわけではございません。新三要件と比べて旧三要件の方が幅があったということではございません。

和田政宗君 それでは、確認ですけれども、新三要件の武力攻撃があったことと旧三要件の急迫不正の侵害があること、これは同じ意味というふうに捉えてよろしいでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 我が国に対する武力攻撃が切迫をしている場合には、自衛隊に防衛出動を命じて部隊を展開するなど、基本的に武力行使以外の必要な措置を講じることとなります。この点においては、旧三要件も新三要件も変わりません。

 一方、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、すなわち存立危機事態においては、新三要件を満たす場合に、防衛出動を命じられた自衛隊は武力の行使を含む対処が可能になるということでございます。

和田政宗君 この新三要件の武力攻撃があったことに関連しまして、サイバー攻撃についてお聞きをしたいのですけれども、敵国が武力攻撃を日本に行おうとする場合、通常、サイバー攻撃を行いまして、例えば自衛隊のデータリンクシステムなどを無力化しようとするわけです。

 政府は、サイバー攻撃の際、何をもって武力攻撃があったというのでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 武力攻撃が発生したか否か、これはその時々の国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様など個別具体的な状況も踏まえまして判断すべきものと考えており、サイバー攻撃、これも同様であります。

 その上で、サイバー攻撃につきまして申し上げれば、その態様には様々なものがあり、また実施する主体も国とは限らず、個人であっても大きな被害をもたらすことは考えられます。

 こうしたサイバー攻撃の特性を踏まえ、サイバー攻撃のみで武力攻撃と評価することができるかにつきましては、政府としても従来から検討を行っているところでありますが、国際的にも様々な議論が行われている段階であり、現時点において政府としてどのようなサイバー攻撃であればそれのみでも武力攻撃と評価されるかについて確定的な判断を示すということは差し控えさせていただきたいと思います。

和田政宗君 今回の安保法制は、今この日本がさらされている状況についてしっかりと守っていこうという法案であるというふうに認識をしておりますが、サイバー攻撃についてはこれから検討するということでありましたら、これは抑止力も含めて高まっていかないというふうに思いますので、これは早急に対応をお願いしたいというふうに思います。

 そして、新三要件について更に確認をしたいのですけれども、新三要件においても、まさに日本や同盟国を標的としたミサイルに燃料が充填されようとしているときに敵基地を攻撃できるんでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 敵基地攻撃については、従来の考え方は、法理上、法的な理屈の上では新三要件の下でも変わらないわけでございます。ただし、現在は我が国は敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有しておらず、個別的自衛権の行使としても敵基地を攻撃することは想定をいたしておりません。ましてや、集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃すること、これはそもそも想定をしていないわけでございまして、先ほどサイバー攻撃のお話がありましたが、いずれにしても、これまでサイバー攻撃に対して自衛権が行使された事例はなくて、サイバー攻撃に対する自衛権行使の在り方については国際的にも様々な議論が行われている段階でありまして、現実の問題として、サイバー攻撃に対する自衛権行使の在り方について、国際的な議論も見据えつつ更に検討してまいりたいと思っております。

和田政宗君 これは、現行憲法の枠内で更に所要の法整備を行ってあらゆる事態に対処できるということが我が国の抑止力ということが高まっていくというふうに思いますので、この点についても更に議論をしていきたいというふうに思っております。

 次に、グレーゾーン事態について聞きます。

 例えば、離島に漁民に偽装した外国の武装兵士が上陸した場合において、武力攻撃と認定できず、防衛出動ではなく治安出動や海上警備行動として自衛隊が出動する可能性があります。その場合、自衛隊には警察官職務執行法が準用され、警察権行使としての武器使用となるため、事態に十分対処できないおそれがあります。外国からの明確な武力攻撃が認定できないような場合においても武器使用権限を国際標準に沿った形にすることなど、事態に十分に対処できるような法整備が必要ではないかと考えます。

 今回の政府案についてはこうした点の法整備がなされておりません。我が党は既に領域警備法でこのような点を政府に提案をしておりますが、政府はどのように考えるんでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 御指摘のような事態に際しまして、政府は五月十四日、「離島等に対する武装集団による不法上陸等事案に対する政府の対処について」を閣議決定をいたして、警察機関では対処できない場合等には自衛隊に海上警備行動や治安出動を速やかに発令をすることといたしました。

 議員の御指摘のように、海上警備行動そして治安出動時の権限については警察官職務執行法を準用しておりますが、正当防衛の案件であります急迫不正の侵害が認められる場合には、自衛官は相手の攻撃を待つことなく危害射撃、これを行うことが認められており、その時々の状況に応じて適切に対処できるものと考えております。

 さらに、治安出動時におきましては、小銃、機関銃等の殺傷力の高い武器を所有していた者が我が国に侵入をし、そして武器を使用するほかにこれを鎮圧する適当な手段がない場合には、事態に応じて合理的に必要と判断される限度において武器を使用することができるということでございまして、このように、海上警備行動や治安出動を命ぜられた自衛隊には現行法においても事態に対処するため十分な武器使用権限が与えられておりまして、御指摘のような事態に対しても支障なく対処できるものと考えております。

和田政宗君 今大臣は自衛隊法の第九十条のところを挙げているわけですけれども、要件として三つ、これにいずれかに該当するというようなことがありますけれども、これ判断に迷う場合もあるというふうに思うんですよね。警察官職務執行法でまずやるということになりますれば、これはその枠からはみ出すときに判断というものが必要になるというふうに思いますので、自衛隊は、これはもう国際法的には軍隊であります。基本的には軍隊の運用基準である武器使用権限、これ国際標準にのっとってやることができれば、これはその段階が進んだとしても適切に対応できるというふうに思いますので、そういった観点が必要であるというふうに考えております。

 そして、それに加えて、海上警備行動について更にお聞きしますけれども、海上警備行動が発令されますと、自衛隊には海上保安庁法が適用されます。その際、日本の領海内を無害でない航行を行う外国の軍艦は適用除外となるはずです。すなわち、何らかの侵害行為を行おうとしている軍艦に対し、武器を使用できず、警告射撃すらできないことになりますけれども、この点について政府はどのように考えているでしょうか。

 また、これは領海内を潜って航行し浮上しない潜水艦についても同じことが言えます。どう対処するんでしょうか。過去、スウェーデンは領海侵犯した潜水艦に警告のために爆雷を落としたことがありますけれども、日本はこれはできないんでしょうか。同じことは中国の海警局の巡視船が領海内に侵入してきた場合にも言えます。政府はどのように考えるでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 御指摘のような事態に際しまして、政府は五月十四日、「我が国の領海及び内水で国際法上の無害通航に該当しない航行を行う外国軍艦への対処について」を閣議決定をいたし、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には自衛隊に海上警備行動を速やかに発令することといたしました。

 御指摘のような事態における自衛隊の具体的な対応につきましては、個別具体的な状況に応じて判断する必要があり、一概に申し上げることは困難でありますが、一般論として申し上げれば、国際法上、外国軍艦、公船、これは我が国の領海内においても我が国の管轄権からの免除、これを有しておりまして、議員の御指摘のとおり、これらの船舶に対して自衛隊は第九十三条三項の規定に基づき武器を使用すること、これはできません。

 しかしながら、仮にこれらの船舶が不法に発砲や体当たり等を行い、我が国船舶に危害を及ぼすような場合等には、その行為を排除するため、海上警備行動により、その事態に応じ合理的に必要と判断をされる限度で武器を使用することができます。また、外国軍艦、公船による侵害行為が我が国に対する外部からの武力攻撃に該当すると判断をし、我が国を防衛する必要があると認められる場合には、防衛出動により対処することとなります。

 このように、現行法においても事態に対処するために十分な武器使用権限が与えられており、御指摘のような事態に対しても支障なく対処できるものと考えております。

和田政宗君 海上警備行動で対応できないときには防衛出動というようなことでありますと、これはその都度判断が入るということでありまして、例えば閣議を電話で行うというようなことでもありますけれども、それでも最低恐らく三十秒から一分、もっと掛かるというふうに思うわけです。その間にもう、例えば我が自衛隊の艦船がやられてしまったとか相手からの攻撃を受けたというようなことになってしまう可能性もあるというふうに思いますので、これは、我が党が提案をしております領域警備法も含めて、しっかりと自衛隊が初期の段階からつなぎ目なく対応できるような形、これを政府は検討すべきであるというふうに私は思います。

 次に、我が国防衛に密接に関係する南シナ海の状況について聞いていきます。

 近くは現実的、遠くは抑制的と言っている政党もありますけれども、これは現在の兵器の能力向上からするとナンセンスであるというふうに考えております。速度マッハ十のミサイルを中国が開発中でありまして、これは南シナ海から十数分、インド洋からも二十数分で日本に飛んでくるわけです。

 遠くだから抑制的でよいというわけではなく、遠くも対処できるようにしなければ日本は守れない状況です。特に、南シナ海は、制海権、制空権を中国に取られると大変なことになります。それは、中国が原子力潜水艦による安定した他国への攻撃能力を身に付けることになるからです。

 地図を御覧ください。東シナ海を見てみますと、水深が浅い部分ですね、白くなっておりますけれども、水深二百メートルぐらいでありまして、自衛隊や米軍が容易に探知することが可能です。一方、南シナ海は水深が二千メートルを超えておりまして、地図の部分では青くなっております。十分な深さがありますので、探知しにくくなるわけです。

 すなわち、中国がこの海域を取れば、原潜からの日本への攻撃能力やアメリカへの攻撃能力を身に付け、その力を誇示して領土拡張圧力を強めることが予想されます。だからこそ、中国は国連海洋法条約に違反してもこの海域を押さえようとするわけです。

 政府は、この南シナ海における中国の軍事的拡張行動についてどのように考えているのでしょうか。

国務大臣(中谷元君) 中国は、南シナ海で埋立て中の地形について軍事利用を認めると公言をいたしております。今後、港湾、滑走路、レーダー等の軍事施設を建設をしていく可能性がございます。

 仮にこうした軍事施設が建設をされた場合に、一般論として申し上げれば、海警のほか海軍や空軍の南シナ海におけるプレゼンスを増大させる可能性があり、それが南シナ海全域における中国のA2AD、接近阻止、領域拒否、この能力の向上につながる可能性が考えられるわけでございます。

 現在、中国は、開発が進むSLBM、潜水艦発射弾道ミサイルJL2、これを搭載するためのジン級SSBN、弾道ミサイル原子力潜水艦、これの配備を進めていると見られておりますが、仮に、強化されたA2AD環境下、これらが南シナ海で運用された場合に、水深が比較的深いという特性と相まって安定的な核抑止パトロールが可能となり、その結果、中国の戦略核戦力の向上につながる可能性も考えられます。

 防衛省といたしましては、南シナ海における情勢が我が国の安全保障に与える影響を注視をしつつ、防衛省としていかなる対応を取っていくべきか、引き続き検討してまいりたいと考えております。

和田政宗君 その南シナ海ですけれども、この南シナ海において機雷がまかれた場合、迂回ルートもあり、日本としては対処しない、機雷掃海については対処しないという政府答弁でありますけれども、中国が機雷をまくということはこの海域に潜る原子力潜水艦の安定した攻撃能力の確保を狙っているわけで、日本にとっても米国にとってもASEAN諸国にとっても、中国がこの海域を押さえれば軍事上も経済上も死活問題です。

 日本はいかなる場合も南シナ海で機雷掃海を行わないのでしょうか。世界で最も多くの機雷掃海の艦船を持ち、アジアにおいて高い機雷回収能力を持っているのは日本のみで、だからこそ、自国の平和を守る、そして、それのみならず、この地域の平和のために担わなくてはならない役割があると考えておりますが、防衛大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(中谷元君) これはいろんな前提があろうかと思いますが、停戦前のいかなる段階においても南シナ海で機雷掃海を行えないのかという前提でございますが、これは限られた前提条件だけで判断し得るものではなくて、また特定の国名、これを挙げた上での仮定のお尋ねでありまして、お答えをすることは差し控えるということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、あえて一般論として申し上げるといたしますと、正式な停戦の合意、これがいまだなされておらず、機雷が遺棄されたものと認められない段階におきまして、自衛隊法八十四条の二に基づいて機雷等の除去を行うことはできません。

 他方、遺棄された機雷など外国による武力攻撃の一環として敷設されているものではない機雷を除去することは、敷設国に対する戦闘行為としての性質を有さないために武力行使には当たらず、自衛隊法八十四条の二に基づき実施することが可能でございます。

 こういった場合等におきまして容易に事態が認定できるものではないと考えておりますが、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府があらゆる情報を総合的に、客観的、合理的に判断をしてまいりたいと考えております。

和田政宗君 加えて御質問いたしますけれども、他国領域内での機雷掃海、これはホルムズ海峡のみということでありますけれども、南シナ海においては、いわゆるそういったホルムズ海峡と同じような状況であれば機雷掃海は行わないということで、この答弁は変わらないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) ホルムズ海峡につきましては、これは言わば海外における、一般的に海外派兵は禁止されている中における、領海内におけるこれは国際法上は集団的自衛権の行使、武力の行使に当たるという例として、例外的な例として申し上げているわけでございますが、もちろん、どの場所であろうとも、日本の周辺で機雷封鎖されればこれは三要件に当てはまる可能性も出てくると。そして、ホルムズ海峡においても、ここを八割通ってくるという観点から第一要件にも当たり得るということでございます。

 そして、南シナ海について私が答弁をいたしましたのは、迂回ルート等もあるのでこれは想定をしにくいという趣旨で答弁をさせていただいております。基本は、もちろん三要件に当てはまればこれは対応していくということでございます。

和田政宗君 ありがとうございます。

 次に、日本を攻撃するミサイルに対する防衛力についてお聞きしていきたいというふうに思いますけれども、現在、日本にある迎撃ミサイルというのは、PAC3でこれ三十六セット、そしてイージス艦が六隻ということですけれども、これ、中国が全面攻撃を仕掛けてきた場合、これは、これもナンセンスと言われるかもしれないですけれども、数百発のミサイルが日本に飛んでくるわけでございまして、とても対応できる能力ではありません。これは、最大の抑止力というのは、いざというときに相手の領土に確実に反撃できる能力を持つことであるというふうに思っております。

 例えば、日本ができることとしては、潜水艦にトマホークのような巡航ミサイルを配備するやり方があります。これは比較的安く配備することができまして、イージス艦を一隻買うお金で千発のトマホークを買えるわけです。しかも、それだけで十分な抑止力になります。迎撃ではなく抑止の観点から相手国への反撃能力として巡航ミサイルを配備することについて、政府はどのように考えるんでしょうか。

国務大臣(中谷元君) まず、特定の国、また地域を対応いたしておりませんが、我が国は、弾道ミサイルの脅威に対しては、我が国自身の弾道ミサイル防衛システムを整備をするとともに、日米安保体制によります抑止力、対処力の向上に努めることによりまして適切に対応するということといたしております。

 また、我が国の弾道ミサイル防衛システムは、多目標対処、これを念頭に置いたシステムでありまして、多層防衛により、複数の弾道ミサイルが我が国に向け連射された場合にあっても対処することは可能でございまして、引き続き、防衛大綱に基づいて、即応態勢、同時対処能力、継続的に対処できる能力を強化する種々の取組を行ってまいります。

 この弾道ミサイルへの対応につきましては米国との協力は不可欠でございまして、新ガイドラインにおきましても、弾道ミサイル防衛に対して協力を行うということを確認をいたしておりまして、こうした日米協力の強化、そして我が国の弾道ミサイル防衛システムとが相まって、ミサイル脅威への抑止力、対処力を高めてまいります。

 そして、潜水艦にトマホークのようなという御質問がございましたが、我が国は、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵、これは一般的に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解しております。

 このような従来からの考え方、これ、新三要件の下でも集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、新三要件から論理必然的に導かれるものでありまして、敵基地攻撃についての従来からの考え方、これにつきましても、るる御説明をいたしているとおり、装備体系を保有しておらず、また集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃することはそもそも想定していないということでございます。

和田政宗君 最後に、総理に聞きます。

 日本と台湾、ASEAN諸国との安全保障協力を我が国の抑止力向上のためにも推進すべきと考えますが、どうでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) ASEAN諸国等との安全保障協力については、一昨年の日・ASEAN特別首脳会議、昨年の日・ASEAN防衛担当大臣ラウンドテーブル、今月の日・メコン首脳会議等、様々な機会を通じて、ASEAN諸国との間で平和安全保障分野での協力の強化について話合いを行ってまいりました。今後も基本的価値を共有するASEAN諸国との協力関係を一層強化してまいります。

 また、台湾との関係につきましては、非政府間の実務関係として維持するというのが我が国の立場であります。台湾は、基本的価値観を共有する我が国の重要なパートナーであり、大切な友人であります。どのような協力や対話を進めていくかは、我が国の基本的立場を踏まえつつ検討してまいりたいと思います。

和田政宗君 終わります。ありがとうございます。

会議録全文